抄録
【目 的】近年、消費者の健康・天然嗜好、色彩豊かな食生活嗜好に対応可能な、赤や紫の肉色の塊茎をもつ新品種ジャガイモの育種が進んでいる。昨年度の大会では、これらのジャガイモに含まれるアントシアニンやクロロゲン酸等による抗酸化活性の調理前後の変化について報告した。本研究では、ジャガイモの主成分であるデンプンに着目し、ゆで加熱及びフライ加熱によるレジスタントスターチ(Resistant starch、以下RSと略)含量の変化を調べた。
【方法】北海道産ノーザンルビー(赤色系)、シャドークイーン(紫色系)、ホッカイコガネ(白色系)の各塊茎を試料とした。生塊茎を凍結乾燥した粉末、フライ加熱(180℃)後の脱脂チップス粉末、ゆで加熱直後と5℃冷蔵1日及び5日後の試料それぞれを、50、80、99.5%エタノールで順次処理してRS測定用試料粉末を調製した。粉末中のRSと消化性デンプン含量をAOAC公定法に基づくMegazyme社製のRS ASSAY KITにより測定した。
【結果】生サンプルのRS含量(粉末乾燥物100g当たり)は,ホッカイコガネ57.9g,シャドークイーン58.5g,ノーザンルビー61.1gであり,品種間に大きな差はみられなかった。いずれの品種においても,生サンプルで約60gあったRSは,ゆで加熱直後には1g程度に減少した。これを24時間5℃で保存すると,RSは5g程度まで増加したが,冷蔵5日後のRSは6g程度であり,冷蔵1日後のものと大きな差は認められなかった。チップスサンプルのRS含量は,0.5gから0.7gの範囲で検出され,いずれの品種においてもゆで加熱直後に比べて低く,ほとんど含まれていなかった。カラフルポテトのRS含量と加熱調理・保存による変化の傾向は,白色系のホッカイコガネとほぼ同様であることが明らかとなった。