抄録
【目的】産業廃棄物として利用されていない温州みかんの果皮を利用する目的で、凍結乾燥果皮を添加して調製した小麦粉焼成品の官能評価とその判定法を調べ、官能評価値の弁別閾の目安を明確化しようとした。
【方法】市販の小麦粉(薄力粉)100gに5%の質量にあたる温州みかんの凍結乾燥物を用意した。まず、食塩無添加の市販のバター40gに上白糖30gを捏ね、温州みかん凍結乾燥物5gを入れた。さらに、小麦粉と水40gを加えて練った。10分間-25 ℃の低温室で保存後、3x3x0.5 cmの直方体に成形の後、180 ℃で20分間焼成した。調製後、1日経過した小麦粉焼成品を年齢21歳から57歳までのパネル21名(年齢は自己申告制で、その記入を任意とした)に凍結乾燥果皮を添加していない小麦粉焼成品を対照(評価点0)として7点評価法の官能評価を行った。その後、分散分析法(ANOVA)を用い、分散に差がないことを確認後、種々の多重比較検定を行った。
【結果】パネルの評点の妥当性を調べるために、対照と同じ調製方法で焼成した凍結乾燥果皮無添加の小麦粉焼成品を実験群の一グループとしてパネルに評価してもらった。その結果、正確な判定値は0であるが、ほとんどの項目で評価点の平均は±1を限度としてばらつき、標準偏差は平均値よりも大きい1.5程度であった。すなわち、7点評価法の場合、評価点が1ないしは1.5点近く異なっていても弁別閾内である可能性を示した。さらに、凍結乾燥果皮を添加して調製した小麦粉焼成品には、かたさの項目は果皮無添加群と有意差(p<0.05)があったが、もろさ、粘り、脂っぽさには差が見られなかった。また、フルーティーな香りの項目のANOVAの結果では、Dunnetの多重比較検定では危険率0.05%で有意差が認められたが、TukeyのHSD、Bonferroni、Scheffeの各検定では有意差は認められなかった。