抄録
【目的】摂食・えん下障害者を対象とした食事においてソフト食は、従来の刻み食に代わる食事形態として、高齢者施設等において注目されている。本研究では、秋田県の郷土食である豆腐カステラを利用して、一般家庭で調理可能な高齢者向けのソフト食の開発を試みた。
【方法】試料は、絹ごし豆腐、上白糖、鶏卵を用いて調製した。ゼラチン、寒天、米粉の3種をゲル化剤として物性評価、官能評価を行い比較した。物性評価は、試料を直径40mm、高さ20mmの容器に15mm充填し、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な万能試験機(Stable Micro Systems社製TA-XT2i)を用いて、直径20mm、高さ8mmの樹脂性のプランジャーを用い、圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。得られた記録曲線から硬さ、付着性、凝集性を算出した。また、官能評価の訓練を受けた20代の女子大生15名をパネルとして官能検査を行った。評価方法は、評点法を用いた。物性および官能評価ともに、試料の温度は10±2℃、20±2℃とした。得られたデータの解析は、一元配置分散分析を行い、群間の検定には等分散の場合はScheffeの多重比較、不等分散の場合はKruskal-Wallis rank-sum testを行った。
【結果】硬さ、付着性、凝集性を測定した結果、ゼラチン、寒天、米粉のゲル化剤を用いた全ての試料がえん下困難者用食品許可基準の許可基準_II_に該当した。官能評価で有意差が認められた項目は、外観、おいしさ、総合評価であった。