【目的】チョコレートは主原料であるカカオ豆の発酵過程により好ましい味や香りが形成されることが知られている。本研究ではカカオ豆の発酵日数を変化させたチョコレートを用いて、味や香りに関する評価用語とその嗜好について明らかにすることを目的に検討を行った。
【方法】発酵日数0-8日のガーナ産カカオ豆を同一条件でカカオマスに調製し訓練パネル11名による味・香りに関する用語出しを行った。用語の収集・整理後、評価用紙を作成し、官能評価は上記カカオマスを用いて調製したチョコレートについて訓練パネル11名と学生パネル66名により7段階尺度で行った。またHPLC法・Folin-Ciocalteu法・SPME-GC/MS法によって遊離アミノ酸・カフェイン・テオブロミン・ポリフェノール・ピラジン化合物の分析を行った。解析はSPSS、JUSE-Stat Worksを用いた。
【結果・考察】カカオマスの用語出しにより12の味と香りの用語が抽出され、発酵と共に「渋味」「酸味」「豆臭」が減り「旨味」「発酵臭」「芳香」が増える傾向がみられた。機器分析値と分析型評価の結果には相関がみられ、主成分分析の結果、第1主成分の負の方向には「芳香」「甘味」「旨味」アミノ酸量、正の方向に「苦味」「渋味」「酸味」「豆臭」「土臭」ポリフェノール量等が示された。第二主成分には酸と香りに関連する項目が示された。学生パネル・訓練パネルによる嗜好型評価で評価が高かった発酵6日・8日は第1主成分負の方向であった。以上よりカカオ豆の発酵によって「苦味」「渋味」「酸味」「土臭」「豆臭」が減少する一方「甘味」「旨味」「芳香」が増加することが官能評価と機器分析によって確認された。