日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成23年度日本調理科学会大会
セッションID: B1a-6
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ポスター発表
セリシンタンパク質の抗酸化性についての考察
*武智 多与理原田 和樹
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抄録

セリシンタンパク質の抗酸化性についての考察
○武智多与理1)、原田和樹2)
1)平安女学院大学 2)水大校

目的】蚕の繭を構成するセリシンは、絹糸タンパク質であるフィブロインを接着するタンパク質であり、繭に20~30%含まれている。近年になりセリシンの物理・化学特性(粘性,乳化性,抗酸化性,チロシナーゼ阻害活性等)が報告され、化粧品や医薬品分野での利用が提案されている。私たちは、セリシンの様々な化学的特性の中の抗酸化性に着目し、具体的な抗酸化活性値を明らかにすることを試みた。本研究では4種類の方法を用いてセリシンのラジカル捕捉活性を測定し、その抗酸化性について検討した。
方法】セリシン試料は、異なる繭から調整したセリシン粉末2種類(緑繭、白繭由来)を使用した。緑繭はあざやかな黄色の繭で、セリシン粉末にケルセチンなどのフラボノール色素を含んでいる。抗酸化測定試料は、セリシン粉末に水を加えて磨砕し、遠心分離(15,000×g、4℃、15分)後、上清をろ過して調整した。調整した抗酸化測定試料について、DPPH法、化学発光法、ORAC法、及びESR法の4法でラジカル捕捉活性を測定した。
結果】4法での測定により、数種類のラジカル捕捉活性を知ることができる。いずれの方法でも、2種のセリシンタンパク質は高い活性を示した。DPPH法では緑繭セリシンが白繭セリシンの約1.3倍、ORAC法では約2倍の抗酸化能を示した。化学発光法では緑繭セリシンと白繭セリシンの抗酸化能はほぼ同程度であった。一方、ESR法では白繭セリシンが緑繭セリシンよりはるかに高い抗酸化能を示した。これらの結果から、セリシンタンパク質が高い抗酸化性を持つことが明らかになった。これまで言われてきたセリシンタンパク質の抗酸化性について、具体的な抗酸化能の測定値により裏付けることができた。

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