抄録
【目的】紅麹菌の産生する色素は,水産練製品や畜産加工製品での利用が多く,着色料として使用されている。色素の生理機能としては,rubropunctatin(赤色色素)に抗菌作用を有すること,monascorubrin(赤色色素)には抗腫瘍プロモーション作用を有することが知られている。本研究では台湾産紅麹が発酵食品に多く用いられ、紅麹色素の抗菌作用や防腐効果が知られていることから台湾産紅麹を用いて菌株を分離し、色素生産性について検討した。
【方法】紅麹菌は,台湾産紅麹から分離したA1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9,A10菌株の合計10菌株を用いた。色素の抽出は,濾別した菌体を60℃,80%エタノール水溶液に1時間静置して抽出した。抽出液は日立製U-3200型 Spectrometerを用い,抽出液中の黄色系色素量は400nmで,赤色系色素量は500nmで測定した。
【結果】台湾産紅麹から分離した紅麹菌10菌株の色素生産量は,乾燥菌体重量当りで表した。黄色系色素生産性では,A4菌株,A8菌株,A1菌株,A10の順で高い色素生産性が認められた。赤色系色素の生産性は,A4菌株,A8菌株,A10菌株,A1の順で高い色素生産性が認められた。さらに,菌体重量当たりの500nmおよび400nmの吸光度比を算出した結果,10菌株の中ではA4菌株が最も高い値であった。これらの結果からA4菌株は赤色系色素の生産量が多いことが判明した。このことから、赤色系色素のrubropunctatinやmonascorubrinの生理機能を有する食品への応用が可能であると推察された。