抄録
【はじめに】
脳卒中後遺症による片麻痺者等が片手動作を余儀なくされた場合、特に障害側が利き手は日常生活活動(ADL)に多大の支障を生じる。病院等で行なわれるリハビリテーションでは、まず歩行や入浴・トイレ・更衣動作などの基本的なADLトレーニングが実施される。在院日数が短縮される昨今では基本的ADLが自立した時点で退院となり、家庭に帰っても家事等の応用的ADLができないものが多い。今回、退院後に調理を希望した片麻痺者自らが考案した片手使用のまな板と一般的に使用されている既成のまな板を用い、片手動作による調理の留意点について検討した。
【方法】
片麻痺者を想定した利き手,非利き手での片手包丁動作(ジャガイモ、ごぼう、りんごの皮むき)を健常者が一般的に使用するまな板(以下、既製まな板)と考案された片手で使用できるまな板(以下、考案まな板)での各々の皮むき動作時間と可食部率を通常の両手動作の場合と比較した。
【結果・考察】
りんごの皮むきでは両手動作を基準(100%)の可食部率に対し、利き手89.7%,非利き手79.8%であった。考案まな板では、利き手93.1%,非利き手92.9%と大きな差が認められた。一方、作業に要した時間は、各々236.8%、378.9%、542.1%、800.0%であり、実用性に向けて動作の習熟が課題となった。
片手動作は日常生活のすべての活動に制限を及ぼす。身体的な障害を抱えていても調理という家族に還元できる活動を通して、家族の一員としての役割を担っていくことは非常に重要であり、更なる障害者の調理活動に関する研究が必要であると考える。