抄録
【目的】 ブンタンは果肉がやや粗く、果汁が少ない柑橘類である。ザボン類は総じて苦味が強い特徴があるため、マーマレードに加工しにくいが、果汁を高圧力処理することによって苦味が抑制されるという先行研究がある。そこで、高圧力処理により果実をゼリー化させてマーマレードを作製し、加熱マーマレードと品質の比較を行うことを目的とした。<br>
【方法】 ブンタンの外果皮をスライスしpH 2.5のクエン酸溶液に、中果皮・内果皮・果肉を磨砕しpH2.7の同溶液に24時間浸漬した。外果皮は硬く苦かったため、100℃で5分間茹でた。これに最終糖度50%となるように蔗糖添加し、500MPaで30分間高圧力処理、または100℃で10分間加熱処理してマーマレードを作製した。各マーマレードについて、色差測定、外果皮の破断強度解析、ゼリー部分のレオロジー測定、官能評価を行った。また、生の各部位およびマーマレード中のナリンギン量を測定した。外果皮、中果皮をクエン酸処理、高圧力処理、加熱処理し、微細構造をクライオ走査電子顕微鏡で観察した。生の各部位およびクエン酸処理した外果皮試料よりAIS(アルコール不溶物)を作製し、ペクチン質を蒸留水、ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液、塩酸溶液で分別抽出してガラクツロン酸を定量した。<br>
【結果】 果皮をクエン酸に浸漬すると軟化が促進し、破断応力は低下して細胞壁にゆるみが生じた。マーマレードの粘弾性は処理方法により大差なかった。ペクチン質は中果皮と内果皮に多く、どの部位でも水溶性ペクチンは少なく、塩酸抽出区分が最も多かった。高圧力処理した方が加熱処理よりゼリー部分のナリンギン量が少なかった。官能評価において、総合評価は高圧力処理の方が高かった。