主催: (一社)日本調理科学会
目的: わが国周辺海域には、約2000種ともいわれる海藻が生息し、その過半数が食用可能といわれている。しかし全国的に用いられているのはコンブ,ワカメ,ヒジキ,テングサ,アマノリ,モズクなど限られた品種のみであり、その調理方法も限られている。ミネラル供給源として、さらに機能性成分の宝庫として、海藻は日常食にもっと有効利用していきたい食材であるが、近年その摂取量は減少傾向にある。本研究では、全国の漁村を対象として各地に伝わる海藻食を調査し、未利用海藻の有効利用をはかるとともに長く受け継がれてきた海藻伝統食を現代食に生かしていくことを目的としている。
方法: 伝統食に関する出版物、地方自治体のインターネット情報などから地域的に消費されている海藻とその食べ方について検索、さらに漁協、水産試験場などの聞き取り調査などを行い、一部地域で食されている海藻とその伝統的調理方法について調査を行った。
結果: 近年有効利用の取り組みが進んでいるアカモクやクロメのほかに、戦前までは全国で利用されていたが近年消費量の減っているフノリなども含めていくつかの種類について地域限定で利用されていることがわかった。紅藻類スギノリ科のギンナンソウもその一つであり、八戸鮫浦ではアカバギンナソウを原料として「蒸して搗く」珍しい調理方法でつくる「あかはたもち」が受け継がれている。エゴノリを「水で煮る」操作を行う、おきゅうとやえごとは違ったテクスチャーを有している。また、九州平戸・対馬では褐藻類コンブ目カジメを「味噌やぬかに漬ける」漬物が存在している。海藻種類や漬け床を変化させて現代食への応用が期待出る伝統食である。