抄録
【目的】近年、伝統的な通過儀礼は生活様式の変化などにより、大きく様変わりしている。昨年は山形県における通過儀礼と儀礼食の現状について報告を行ったが、東北・北海道地域全体としては、どのような状況であるのかを明らかにするとともに道県の比較検討を行い、山形県の大切にしている通過儀礼行事、儀礼食について考察することを目的とした。【方法】日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」データベースより、東北・北海道支部所属の調査者が入力した中から、道県毎に現住所に10年以上居住している回答者を抽出し対象とした。また、20歳未満と20歳代の回答者を子世代、30代以上の回答者を親世代とし、世代毎の結果についても比較検討を行った。【結果】対象者は2180名で、北海道487名、青森591名、岩手139名、宮城497名、秋田191名、山形75名、福島200名であった。地域全体の認知度は、誕生日、七五三、成人式、婚礼、葬儀、法事が90%以上であり、経験度では、誕生日、七五三、葬儀が高率であった。食経験では誕生日のケーキ(93.5%)、七五三の千歳飴(80.5%)などが高かった。7道県を比較すると通過儀礼の認知度・経験度では百日祝いに差が見られ、儀礼食の経験度では七五三と成人式の赤飯、長寿の祝い料理、葬儀と法事の料理に差が見られた。山形の結果について他の道県と比較すると百日祝い、結納、厄払いの経験度が高く、百日祝いの尾頭付き魚、結納の料理、厄払いのもち、法事の精進料理の食経験も高率で、これらの行事や料理を大事にしていることが示唆された。世代毎の比較では、親世代の経験度において百日祝いと初誕生の行事に道県の差が見られた。