抄録
九州地方における儀礼食の地域性
○篠原壽子,麻生愛子,室屋かおり
東九州短大
【目的】平成21~23年度に実施された日本調理科学会の特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食と儀礼食」は報告書が刊行され、九州各県における行事食の概要と特徴は本学会誌Vol.45,No.4,316-320(2012)に報告されている。本研究は、沖縄県を除く九州地方7県における通過儀礼に供される食べ物の認知および経験などについて検討した。
【方法】調査員全員に送付された日本調理科学会特別研究データベース中の九州7県の儀礼食データを用い、県別、儀礼食別に単純集計およびクロス集計し解析した。
【結果及び考察】調査対象者の性別は女性が約94%、男性が約6%であり、年齢構成は20歳代までが約51%、40~50歳代が約36%を占めていた。家族構成は、二世代および同世代同居形態がそれぞれ約40、29%であった。九州7県では、誕生日、七五三、成人式、葬儀、婚礼・結婚披露、法事、結納、出産祝い、長寿祝いの順に、儀礼食としての認知度が高く、お七夜および百日祝いは認知度が低かった。通過儀礼の経験度については、誕生日、七五三、葬儀、法事の順に高く、お七夜、百日祝いおよび厄払いは経験度が低かった。他の地域に見られない特徴的な儀礼食として、福岡県において、婚礼後の初めての年の瀬に婿の実家から嫁の実家へ送る「嫁ぶり」や法事での「だぶ」があげられていた。