抄録
【目的】本研究では福岡県築上郡上毛町において、食文化の継承がどのように行われているか、地域の伝統的な郷土食・行事食・儀礼食について、実態を明らかにするために検討した。【方法】平成23年9月、上毛町における保育所2所・小学校4校・中学校1校の保護者、計694名を対象に自己記入式質問用紙調査によるアンケートを実施した。調査内容は上毛町の代表的な郷土食・行事食・儀礼食に対する認知・喫食経験・調理の可否等である。解析はSPSSver.19.0Jを用いてχ2検定を行い、p<0.05をもって有意と判定した。【結果】郷土食に対するイメージの上位は、季節の旬がわかる50.9%、健康に良い48.5%、食べる機会が少ない41.9%であった。日常行事食を作っているは核家族世帯が26.7%、祖父母と同居世帯が43.0%であり、儀礼食は核家族世帯が13.5%、祖父母と同居世帯が32.0%であった。行事食のおせちは核家族世帯30.2 %、祖父母と同居世帯51.7%であり、有意に後者が高値を示した。郷土食である煮ぐいを作っているは核家族世帯40.2%、祖父母と同居世帯69.0%であり、後者が有意に高値を示した。郷土食の伝承の必要性では、核家族世帯24.0%、祖父母と同居世帯50.6%であり、後者が有意に高値を示した。【考察】祖父母と同居世帯が郷土食の伝承に深く関係していることが示唆された。核家族化の進行と共に郷土食の伝承を継続していくことが困難であり、核家族化などのライフスタイルの変化を受け止め、各家庭だけでなく社会全体で食文化の伝承を行っていくことが重要であると考えられる。健康増進のための食育に導入できる伝承料理メニュー集を作成し、一般家庭に配布した。