日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成25年度(一社)日本調理科学会大会
セッションID: 2C-p4
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口頭発表
糊化過程におけるリン脂質の動態
-粘度上昇中におけるリゾレシチンの存在状態について-
*原田 良子石永 正隆杉山 寿美
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抄録
【目的】小麦粉澱粉粒内の脂質は、ほとんどが水飽和ブタノール(WSB)による熱抽出で抽出されるLPL(ほとんどがリゾレシチンLPC)しか存在しないとされていた。しかしながら、我々は、粘度上昇中の糊液では、熱抽出画分のLPCが著しく減少し、その減少分に相当する量のLPCが常温抽出画分に回収されることを明らかにした。この要因を明らかにすべく、温水処理及び湿熱処理を行い、糊化過程でのLPCの存在状態を検討することとした。【方法】ビーカーに小麦粉澱粉34gと蒸留水221gを加え、温水処理後(48~49℃,24hr)、濾過(No.3ろ紙)、風乾(25℃の暗所で2日間)した。また、遠沈管に小麦粉澱粉7gを採り密封し、オートクレーブで湿熱処理後(20minまたは2hr)、試料を取り出した。処理した試料はいずれも常温加熱乾燥法にて水分含量を測定した。RVA測定は、無処理の澱粉の乾燥重量にあわせ既報に従って行った。粘度上昇中の糊液よりWSBを用いて脂質の抽出を行い、リンの定量を行った。【結果と考察】当初、温水処理または湿熱処理により、澱粉の緻密な構造に封じ込められていたLPC(非複合体)がアミロースと複合体を形成し、無処理の澱粉に比べ、LPCの回収量は常温抽出画分で少なく、熱抽出画分で多くなると推測していたが、無処理の澱粉との違いは認められなかった。このことから、粘度上昇中に抽出されるLPCは、澱粉粒内で遊離の抽出されやすい状態では存在してないと推察された。一方、処理した澱粉のRVA曲線から粘度上昇開始時間、最高粘度、最高粘度到達時間が処理の違いで差が生じた。
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© 2013 日本調理科学会
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