抄録
【目的】飼料の大半を輸入に頼っている日本の畜産物は自給率が極めて低い。また、輸入飼料価格高騰で小規模経営畜産農家の打撃は大きい。これらの問題の解決として国内の休耕田や耕作放棄地で飼料用稲を生産し、これを輸入穀物飼料の代替品とする試みがなされている。岐阜県では飼料用稲の籾米を豚と鶏,茎を牛の飼料に利用することで特色ある畜産農業の振興に繋げる取り組を行っている。本報告は、養鶏飼料として飼料用稲の籾米供与が鶏の肉質や卵質に影響をもたらすかを検討したものである。
【方法】実験鶏は、G県下の養鶏園で飼料区毎に10~17羽を用いた。飼料は、従来飼料および籾米飼料を用いた。飼育中に、飼育鶏の産卵率や鶏死亡率等を、卵については卵重、HUおよび卵黄色(Color Meter ZE6000(日本電色工業株式会社))等を測定した。各飼料区で飼育した鶏の肉および卵の食品としての品質は、一般消費者を対象とした鶏肉および卵料理の嗜好性評価で検討した。
【結果】1.籾米供与飼育区鶏の産卵率、卵重等は、従来飼料供与飼育区のそれらに比し漸増の傾向を示した。また、籾米供与飼育区で飼育期間中に鶏の死亡は認めなかった。これらから、主飼料材料のトウモロコシ(輸入)の代替として飼料用稲の籾米を用いることによる鶏への負荷はないと考えられた。2.籾米飼料供与鶏の消化器官は、従来飼料供与飼育時の場合に比し2倍程大きくなっていた。なお、未消化物は確認できなかった。3.籾米飼料供与区鶏の卵のHUは、従来飼料供与飼育区の場合に比し若干高値を示した。4.飼料の籾米率の増加に伴い卵黄色は、L値は漸増、a値およびb値は顕著な低下を示し、視覚的には著しく白色化した。5.嗜好性評価では、鶏肉料理では飼育飼料差は殆ど認めなかった。しかし、卵料理では籾米飼料供与区鶏の卵を用いた場合には、白色がその料理を引き立てたり、副材料の味が引き出されてより美味しく感じるような調理品が好評であった。