日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成25年度(一社)日本調理科学会大会
セッションID: 2D-p5
会議情報

口頭発表
滋賀県田上地方に伝わる菜の花黄金漬けの成分と嗜好性
*七里 あや子井上 瑞穂久保 加織
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】菜の花黄金漬けは滋賀県田上地域の特産品であり、地元の郷土学習の教材にもなっている。菜の花を8%の塩で約8ヶ月間漬けたもので、「畑のふなずし」と呼ばれる独特の風味と黄金色が特徴である。本研究では、菜の花黄金漬けの栄養価と嗜好性を検討するために、脂質、塩分、有機酸、揮発性成分を分析した。
【方法】試料には生の菜の花(生試料)と熟成途中で採取したもの(中間試料)、および完成品(完成試料)を用いた。脂質はBligh&Dyer法によって抽出後、メチル化し、GCにより脂肪酸を分析した。塩分はナトリウムイオン濃度計により、有機酸はHPLCにより分析した。揮発性成分は40℃で60分間SPMEファイバーに吸着させ、GCMSにより分析した。
【結果】完成品の塩分は3.9%であった。脂質は生試料で1.4%であったが、完成試料で3.3%になった。加工による脂肪酸組成の変化はみられず、いずれの試料でもα-リノレン酸が約50%を占めた。生試料には、酢酸、クエン酸、コハク酸が微量に含まれていたが、塩漬け中に乳酸、ピログルタミン酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸も出現し、特に乳酸は、完成試料に25mg%と高濃度に含まれていた。pHは、生試料6.0に対し、中間試料では5.1、完成試料では4.0まで低下していた。生試料では22種類の揮発性成分が検出されたが、塩漬け熟成中にシナモンの香りを持つHexanenitrileやしその香りを持つHeptanenitrileなどの一部の揮発性成分は検出されなくなり、一方、様々な酸やエステル、アルデヒド、ケトンが検出されるようになった。以上のことから、黄金漬けの味や風味には、塩漬けに用いる塩分と熟成中の乳酸発酵によって生成される乳酸をはじめとした酸と様々な揮発性成分が関与していると考えられた。
著者関連情報
© 2013 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top