抄録
【目的】食行動や食意識の形成に共食頻度や食卓の雰囲気が影響を及ぼすことが報告されているが,児童期の食事状況が青年期になってからの食行動や食意識に及ぼす影響については明らかとなっていない。そこで,本研究では,大学生の食行動・食意識と児童期の食事状況との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】長野県内の大学生を対象に,2012年11月に無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,回答者の属性,児童期の食事状況(食事の質,共食頻度,食卓の雰囲気),現在の食行動及び将来の食事についての食意識などとした。配布数308部,有効回答数306部,回収率99.4%であった。データ集計・分析にはSPSS19.0Jを用いた。
【結果】大学生の食行動と児童期の食事の質,共食頻度,食卓の雰囲気をクロス集計した結果,「栄養バランスのとれた食事」,「規則正しい食事リズム」,「朝食をしっかり食べる」については関連が見られなかった。一方「よく噛んで食べている」,「好き嫌いがない」は,児童期の食事の質が良い群で有意に高い値であった。「朝食の共食頻度が週4-7回」,「昼食の共食頻度が週4-7回」は児童期に朝食共食頻度が高い群で,「食事をいつも楽しく食べている」は児童期に夕食共食頻度が高い群で,有意に高い値であった。児童期の食事の雰囲気が癒しまたは楽しい群で「昼食の共食頻度が週4-7回」の値は有意に高かった。大学生の食意識と児童期の食事の質との間に関連は見られなかったが,児童期の共食頻度が高い群および食卓の雰囲気が癒しまたは楽しい群では,食意識は有意に高かった。今後,食育を推進していく上で,食卓の雰囲気も考慮に入れていくことが望まれる。