抄録
【目的】約10%の食塩を含む塩麹は、「万能調味料」として、肉、魚、野菜など各種料理の味付けや前処理に利用されている。塩麹には、麹の持つタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)やデンプン分解酵素(アミラーゼ)が活性のある状態で含まれており、これらの酵素による甘味やうま味の付加、食材の軟化などの効果が期待されている。昨年度の本大会では、塩麹プロテアーゼのカゼイン分解能を測定することにより、その基本的性質を明らかにした。本研究では、塩麹による食肉タンパク質の分解能について検討した。
【方法】塩麹は、乾燥米麹「みやここうじ」((株)伊勢惣)を用いて、メーカー推奨の方法に準じて調製した。豚ミンチ肉は、購入後小分けして冷凍保存し、必要に応じて解凍使用した。遊離アミノ酸(FAA)は、トリクロル酢酸可溶性成分としてニンヒドリン比色法(570nm)で測定した。なお、L-ロイシンを標準物質として算出した。プロテアーゼ活性は、カゼイン消化法により測定した。
【結果】豚ミンチ肉(ペースト状)に塩麹抽出液(2倍希釈液)を1:1で作用させると、30℃では少なくとも6時間は一定速度でFAAが生成した。30℃、24時間後、豚ミンチ肉1gにつき約20mgのFAAの増加を認めた。この間塩麹自体のFAAは変化せず、豚ミンチ肉のみでは約4mgの増加があった。6℃(冷蔵庫保存)、24時間では、塩麹添加により、豚ミンチ肉1gにつき約5mgのFAAの増加を認めた。豚ミンチ肉のみ(6℃、24時間)ではFAAの増加は認められなかった。