抄録
【目的】大豆は,マメ科植物の中でも珍しく未熟および完熟子実の両者で食すことが可能な作物である。大豆を未熟な内に収穫したものがエダマメだが,近年は各々の専用品種が存在する一方で,‘京白丹波’は兼用品種としての普及を進めている。そこで本研究では,‘京白丹波’に着目し,大豆の煮豆およびエダマメの食味に寄与する要因を明らかにした。
【方法】大豆の試料は,京白丹波:KT,新丹波黒:ST,オオツル:OTの3品種,エダマメはKT,紫ずきん:MU,富貴:FKの3品種を用いた(同年に京都府農林水産技術センターで栽培・収穫)。それら煮豆及びゆでエダマメを調製し,化学分析として80%エタノールおよびメタノールにて可溶性糖・アミノ酸を抽出しHPLC(1260 Infinity/Agilent technologies)に供して定量した。また,物性測定はクリープメータ(RE2-3305B/YAMADEN)により行い,官能評価は京都府立大学食保健学科の学生を対象に行った。
【結果】大豆の煮豆ではST,エダマメではMUの遊離糖および遊離アミノ酸(前者:1180㎎,506㎎/100g d.w.;後者:4610㎎,621mg/100g f.w.)含量が最も高く,物性は軟らかく粘性のある性質を示し,官能評価(総合評価)では他の2品種に比べ有意に(p<0.05)高く評価された。しかし,STおよびMU以外では,煮豆とエダマメでは官能評価(総合評価)を高くする要因が異なった。煮豆は,物性の軟らかくもちもちとした食感が,エダマメでは物性に加えて遊離糖や遊離アミノ酸含量が官能評価に影響を及ぼすことが示唆された。食味に関わる要因として香りも重要であるため,今後は品種や調理法の違いによる“香り”が食味に及ぼす影響についても検討する予定である。