【目的】麹を利用した加工食品には,べったら漬けや三五八漬けがある.三五八漬けは野菜に限らず肉や魚も漬け込まれている.我々は,米を用いた麹の漬け床に漬け込んだ肉,魚,豆腐の組織構造を調べ,麹菌の作用によるタンパク質の分解を観察した.さらに,塩麹に漬け込んだ市販食品の組織構造に同様の変化があるか調べた.
【方法】市販加工食品として,塩麹漬けした赤魚を用いた.魚肉から試料を切り取り,ドライアイスで冷やしたアセトンで急速凍結し,コールド・ミクロトームで厚さ14㎛の切片を作成し,過ヨウ素酸・シッフ染色ならびにヘマトキシリン・エオジン染色をおこない,検鏡した.
【結果】麹が筋肉に付着した部位から,筋線維と筋線維の間に部分的に麴が入っていた.筋線維の間に入った麹には,過ヨウ素酸・シッフで染まる顆粒が多数存在した.顆粒が過ヨウ素酸・シッフ染色で染まったのは、顆粒の細胞壁である.顆粒は,ヘマトキシリン・エオジン染色でヘマトキシリンに染まる核を有していた.これらの顆粒は同じ大きさ(平均4.2㎛)であったので,顆粒は酵母であると判断した.筋肉内に侵入した麹の菌糸および酵母によって,筋線維間の筋内膜およびそれに接する筋線維の表面のタンパク質が部分的に分解されていた.