抄録
【目的】熊本県特産の郷土酒の赤酒は、本みりんと糖度、アルコール度がほぼ同等で、調味料として使用されている。これまでに、赤酒の食肉への成分溶出抑制や味の浸透性向上、食材へのてり・つやの付与は、本みりんと同等またはそれ以上であることを報告した。また、炊飯米の飯臭を抑制することも報告した。本研究では、さらに古米や低アミロース米を用い、赤酒の添加がにおいやテクスチャーの変化に及ぼす影響を検討した。
【方法】古米試料は平成25年度産コシヒカリ(新潟県産)を、新米試料は平成26年度産コシヒカリ(新潟県産)を、低アミロース米は平成26年度産ミルキークイーン(栃木県産)を用いた。洗米後135%の水に30分浸漬し、赤米重量の1.7%の料理用赤酒(瑞鷹株式会社)または本みりん(タカラ酒造株式会社)を添加し、その量を加水量から引いた。対照として、添加なし米を炊飯した。炊飯後、室温に30分放置し、そのにおいを、におい識別装置(株式会社島津製作所 FF-2A)で測定し、「臭気寄与」、「類似度」、「臭気指数相当値」を比較した。飯のテクスチャーは、クリープメータ(山電株式会社RE2-33005B)で測定し、官能評価を行った。
【結果】赤酒および本みりんを添加した飯は、新米ではやや硬くなる傾向がみられ、低アミロース米では違いはみられなかった。古米では、有意に硬さが低下した。新米、古米および低アミロース米において、においの強さを示す「臭気指数」が赤酒も本みりんも同程度であった。新米および古米に対する分析型官能評価においても「飯の香りのつよさ」で赤酒と本みりんに差はなく、飯臭抑制の効果に差がないことが考えられる。