日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成28年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2P-53
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ポスター発表
西日本の甘藷の切り干しの呼称と分布状況
かんころを中心として
*安部 春香髙橋 弘一湯浅 正洋冨永 美穂子
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抄録



【目的】甘藷の切り干しは長崎県内の多くの地域でかんころと呼ばれる.かんころに餅,砂糖を加え搗き合わせたかんころ餅は五島列島を中心に故郷の味として継承され,長崎の特産物のひとつとしても製造・販売されている.しかし,原料のかんころは生産者の高齢化により年々減少しており,存続の危機にある.農文協出版の「日本の食生活全集」には大正末期から昭和初期の時点で九州,瀬戸内海沿岸地域を中心にかんころの呼称およびそれに関連する料理が散見される.本研究では伝統食文化継承活動の一環として,かんころに関連する郷土料理類を上記全集から収集整理するとともにかんころの現状を知るために西日本の甘藷の切り干し文化の有無,切り干しの呼称,その分布状況を明らかにすることとした.

【方法】農文協出版「日本の食生活全集」全50巻からかんころに関連する料理と存在地域を収集整理した.その情報をもとに2016年1月から5月にかけて西日本の府県および市町村役場,教育委員会,計691カ所に5部ずつ,甘藷の切り干しに関する質問紙(甘藷の切り干しの有無,切り干しの呼称,甘藷料理など)を郵送法により配布し,役場職員,学芸員,食生活改善推進員などから得られた回答を集計した.

【結果】かんころに関連する料理は生干しを使用したものが多く,粉にして蒸したかんころ団子などが存在した.切り干し文化が存在したのは回答が得られた地域の約4割であった.切り干しは「干し芋」と呼ばれる回答が最も多く,西日本各地に分布していた.かんころの呼称は北部九州に集中し,瀬戸内海沿岸地域にかけ帯状に広がっており,「食生活全集」の存在地域とほぼ一致した.「ひがしやま」などある地域固有の呼称もいくつか存在した.

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© 2016 日本調理科学会
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