抄録
【目的】レジスタントスターチ(RS)は小腸内で吸収されない澱粉であり、血糖値上昇の抑制や腸内環境の改善効果がある。澱粉質食物に含まれるRS生成には温度が大きく関与しているが、調味料添加などの調理過程におけるRS量変化に関する知見は乏しい。そこで本研究では、澱粉質食物のうち多くの調理方法が知られているジャガイモに着目し、ジャガイモ中のRS生成に与える100℃を超える温度処理と食酢の原料となり得る酢酸添加の影響を検討した。
【方法】基礎知見を得るため、ジャガイモ由来の精製澱粉を用いた。精製澱粉に水分含量80%となるように水を加え、無処理(1)、100℃20分加熱(2)、100℃20分加熱後6℃24時間(3)、100℃20分加熱後6℃48時間(4)、120℃20分加熱(5)、120℃20分加熱後6℃24時間(6)、120℃20分加熱後6℃48時間(7)の条件で温度処理後、凍結乾燥したものを試料とした。これらを酵素処理法によりRS量を測定した。また、上記の条件にて水を1M酢酸に置き換え同様にRS量を測定した。さらに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた表面構造の観察および、食後の血糖値上昇度を示す予測グリセミック・インデックス(eGI値)の測定を行った。
【結果】水添加での温度処理では各温度処理群で大きな差は得られなかった。一方、酢酸添加時は100℃加熱後の冷却時間にかかわらず(3、4)100℃加熱のみ(2)と比べてRS量が増加し、水添加よりも高い値を示した。しかし、120℃加熱後は冷却の有無にかかわらず(5~7)、100℃加熱処理(2~4)と比べRS量は著しく減少した。SEMによる表面構造の観察において、水添加では変化はなかったが酢酸添加では120℃加熱において多数の細孔が生じた。これらの結果から、ジャガイモ中のRS生成は温度条件と酸添加により大きく変動することが示唆された。eGI値は現在検討中である。