抄録
【目的】昨年度の本大会によって、エルヴェ・ティスの考えに基づき料理をマクロレベルとミクロレベルの双方から式化、分析し、料理を構造によって分類できることを示唆した。「料理の式」を確立するためにはより多くの式の作成、料理構造観察、定義の見直しを繰り返し行う必要があると考える。よって本研究では①レシピに基づいた料理の式の作成と②構造観察に基づいた料理の式の作成を行うこととした。また料理の式の応用例として新しい料理の開発が期待できるため、③新規料理開発方法の提案を行うこととした。
【方法】①森永乳業株式会社のウェブサイトに掲載されている「乳製品を使ったレシピ」から、主食・主菜・副菜あわせて380品を対象とした。②揚げ物の構造に着目し揚げ油の浸透具合を観察した。実験試料として鶏ささみを用い、脂溶性色素であるスダンⅣによって油を染色した。③料理式の改変パターンを考え、実際に「酒盗のピザ」について式を改変することにより料理を作成した。
【結果】①要素数を比較したところ、固体S、液体W、油脂O、併存+、包合⊃、重層σの数が「NHKきょうの料理」よりも「乳製品を使った料理」において有意に多い結果となった。これらのことから、乳製品の使用が料理の構造を複雑化している可能性を示した、②天ぷらのレシピに基づいた式はS1⊃(O/S2)であるが、観察に基づいて新しい基準に従うとS1⊃S2⊃(O/S2)に変化した。このことから構造観察に基づいた式は料理式の定義を見直す手がかりになることが考えられ、油の浸透割合など数値を用いることでより正確な構造を表現できることが示唆された。③式の改変方法には様々なパターンがあり、これらを組み合わせることで料理式は多様に変化すると考えられ、料理の開発への利用が期待できる。