日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成28年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1B-a4
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口頭発表
水浸漬時間とホタテ干し貝柱の形状が浸漬液の性状に及ぼす影響
*荒木 萌久松 裕子小林 里恵
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抄録

【目的】福島県会津地方の郷土料理である「こづゆ」には、ホタテ干し貝柱(以後貝柱と略記)が利用される。貝柱は、水浸漬により軟化させ、その浸漬液と共にこづゆの調理に利用される。本研究では、水浸漬で貝柱を効率よく軟化させる条件うを検討する。とともに、その浸漬液の性状に及ぼす浸漬時間と貝柱の形状の影響調べた。
【方法】貝柱(北海道・オホーツク産)は円柱状の試料とそれを裂いた試料それぞれが2.5%となるように加水(20℃)し1、2、4、8、12時間浸漬した。一定時間経過後に、貝柱と浸漬液にそれぞれ分け、浸漬液はろ紙により濾過して、その塩分濃度、色度を測定するとともに紫外線可視吸収スペクトル(190~400nm)法により核酸関連物質の溶出量を確認した。貝柱は浸漬前後の重量変化から吸水率を求め、レオナーを用いた圧縮試験により圧縮を測定した。
【結果】貝柱は円柱状試料に比べ裂き試料において吸水速度が速く、短時間で圧縮荷重が有意に低下した。浸漬液の塩分濃度は、裂き試料で比較的高かった。浸漬液では紫外領域に吸収が認められ、それぞれウリジル酸(262nm付近)、アデニル酸、グアニル酸、アデノシン(255~256nm付近)、またヒポキサンチン(247nm)、イノシン(248nm)に相当すると推定された。円柱状試料では、浸漬4時間までは255nm以降のピークが時間の経過に伴い増大し、浸漬8時間以降に247~248nmのピークが検出された。裂き試料では、浸漬1時間と12時間ではほぼ同様のスペクトルを示した。また、円柱試料では8時間以上の浸漬によりb*値が有意に高くなり黄度が増した。裂き試料では浸漬時間による有意な色度の相違は認められなかった。

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