抄録
【目的】アクリルアミド(AA)は、食品を120℃以上で加熱したときにメイラード反応によって非意図的に生成する有害化学物質である。炊飯は湿式加熱の調理法であるが、低濃度のAAが生成することが知られており、鍋肌での高温加熱が主な原因と考えられている。しかし、品温が120℃を超える加圧や副材料の存在がAAの生成に与える影響については不明な点が多い。本研究では、精白米を加圧条件も含む様々な条件で炊飯した白飯および炊き込み飯を対象として、AA生成の実態を明らかにすることを目的とした。
【方法】各種調理器具(圧力鍋(146 kPaG、80 kPaG、0 kPaG(常圧)の異なる加圧条件が可能、内鍋を使用可能)、炊飯器(マイコン式、IH加圧式)、土鍋)を用いて、常温で30分間浸漬した精白米を用いて、白飯および炊き込み飯(ゴボウ、ニンジン等の具を含む)を炊飯した(n=4)。炊飯時に鍋内側底面および米(飯)中央部の温度を測定した。炊飯後、飯全体を攪拌し、一部を採取してAA濃度を測定した(LC-MS/MS法、検出限界 0.2 μg/kg、定量下限 0.5 μg/kg)。
【結果】各種方法で炊飯した白飯中のAA濃度範囲は1.2~2.8 μg/kg、炊き込み飯中のAA濃度範囲は1.4~2.7 μg/kgであったが、調理器具の種類、炊飯中の加圧条件および鍋肌近傍での局所的な高温加熱の違いによってAA濃度に顕著な差は認められず、また、白飯と炊き込み飯の間でも差は認められなかった。炊飯米のAA濃度は概して低いものの、日本人の食生活において白飯の摂食量が大きいことを考慮すると、日本人が食品を通じて摂取するAAにおける米飯の寄与には慎重な評価が必要と考えられた。
※農林水産省の委託研究事業を活用して本研究を実施した。