抄録
【目的】炊飯において、トマトケチャップを調味料として加えたり、トマトジュースや野菜ジュースなどの固形分の多い液体を炊飯液に加えたりすると、通常の炊飯器ではうまく炊けないことがある。また、具材が多い場合も同様である。そこで、本研究室では、これらの炊飯に適した加熱方法を見い出すために、IH炊飯器、ガスコンロ、スチームコンベクションオーブン(スチコン)を用いて炊飯したトマトライスの炊飯特性について調べ、スチコンでの炊飯がトマトライスに適している可能性があることを本学会*にて発表した。本研究では、トマトジュースを添加して炊飯ができない理由を明らかにするため、トマトライスの炊飯温度履歴を測定したので報告する。【方法】米重量は300 gとし、濃縮還元トマトジュースを米重量の1.8倍添加した。また具材は玉ねぎとし、米重量と同等量加え、IH炊飯器、スチコンを用いて炊飯を行い、炊飯温度履歴を測定した。【結果】IH炊飯器を用いて、トマトジュースを炊飯液として炊飯を行ったところ、約20分後(浸漬時間を含める)から温度が上昇したが、炊飯釜内部の温度分布は不均一であり、おいしい米飯の炊飯に必要とされている98℃、20分以上温度の維持ができていない部分があった。具材を添加して炊飯した場合は、さらに温度分布にばらつきが生じた。これらの結果から、炊飯液中に固形分があると対流が起こりにくくなると考えられた。また具材を添加した場合においては、炊飯が完了せず生米のままであったことから、具材の重みでさらに対流が起こりにくくなり、炊飯ができなかったと考えられた。それに対しスチコン炊飯では、容器内での温度分布のばらつきがIH炊飯器よりも小さい傾向が認められた。
*坂本薫,森井沙衣子,スチームコンベクションオーブンで炊飯したトマトライスのテクスチャー,日本調理科学会大会研究発表要旨集25, 115, 2013