抄録
【目的】平成24年から「次世代に伝え継ぐ 富山の家庭料理」について聞き書き調査および撮影を行ってきた。調査の結果から県内の地域に息づいてきたおやつの特徴をまとめ、考察した。
【方法】調査対象者は、富山県に生まれ育ち、55年以上居住した70才代の「とやま食の匠・伝承の匠」の方々とし、対象者の関係者にも協力を依頼して聞き書き調査を行った。調査期間は平成26年8月から平成28年5月、調査地区は富山県全域、撮影は黒部市コミュニティセンターで行った。調査内容は、地域の暮らしや子どもの頃・結婚の頃の日常の食事、食料の保存や加工、調味料、間食、行事食、ハレの食事、次世代に伝えたい家庭料理などとした。また対象者から作り方を教えていただき、食体験も行った。
【結果】米・米粉のおやつが多かったのは、富山が米中心の県であることに起因していると示唆された。米・米粉を主材料としたおやつは、やきつけ、水だんご、いもがいもち、とぼもちであった。新川地区のやきつけは、食料が乏しく農家の人が出荷できなかったくず米を粉にした農作業の腹ごしらえだった。粉に混ぜるヨモギを摘むのは子どもたちの仕事で、大きな鉄鍋いっぱいに焼き上がる頃に自家製の味噌を塗って食べた。水だんごは、黒部の豊富な冷たい清水(しょうず)でだんごを冷やして食べる夏のおやつとして親しまれた。いもがいもちは、新米の頃に里芋を混ぜて作り、いもおはぎとも言った。年末には県全域で昆布や黒豆などを混ぜたとぼもちを作り、そのまま切ったり、又は軒に吊るして寒もちとして保存し、焼いたり、揚げたりした冬期のおやつであった。