主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
開催地: お茶の水女子大学
開催日: 2017/08/31 - 2017/09/01
【目的】食パンをトーストすると,焼き目が付く。その際の色の変化とトースト表面および内部の力学物性を比較し,人間の官能評価値との関係を調べた。
【方法】家庭用製パン器 (Panasonic SD-RBM1001)で,厚さ25 mmパンを調製し,市販のポップアップトースターで加熱レベルダイヤルに従い,パン表面の色を色差計(CR-10, コニカミノルタ)で追跡した。その後,AACC変法に従って,deformation curve (FT –L曲線) を描き,25 % deformation (L=6.25 mm)での力(CFV20)を求めた。さらに,CFV20算出時のFT –L曲線上のL=1 mmまでpenetrateさせた際のLに対するFT の変化割合を初期傾斜Sinと定義し,トーストの表面とトースト内部までの力学物性値(CFV20)および平均年齢21.6±1.02歳の5名の男女パネルの指先でトーストを圧す感覚を数値化した官能評価値と比較した。
【結果】加熱レベルダイヤルを高くすると,焼き目が濃くなった。その際,加熱レベルに伴い,L値は顕著に下がったが,aとb値は加熱レベルとはあまり対応していなかった。一方,食パンの力学物性をAACC変法を用いる方法で調べたところ,食パン表面のSin も加熱レベル上昇に伴って大きくなった。さらに,Sinをトーストの表面の力学物性値としてトースト内部の力学物性値CFV20との関係を調べたところ,双方は高い相関で直線に近似可能であった。このことから,トースト表面と内部の力学物性値はほぼ対応していると考えられた。また,トーストした食パン表面の明度(L値)とCFV20も,高い決定係数で双方が直線に近似されたため,限定的な条件ではあるものの,非侵襲的な方法でトーストした食パンの力学物性を推定できると思われた。一方,加熱レベル0と加熱レベル5のトーストを指先で圧して受ける感覚をそれぞれ最小(-3),最大(+3)のかたさ標準として,焼き目の強弱によるトースト色のかたさ判断への影響をマスクさせた系を用いて加熱レベル0,1,3,5のトーストの指先感覚の官能評価を行ったところ,トーストの加熱レベルと人間の指先感覚の官能評価値はよく対応していた。