日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: P-k42
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特別企画 次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理 ポスター発表
大分県の家庭料理
地粉とさつま芋で作るおやつ
西澤 千惠子*立松 洋子*望月 美左子宇都宮 由佳篠原 壽子
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抄録

【目的】伝統的な地域の料理が伝承されにくくなっている現在、大分県の次世代に伝え継ぐ家庭料理を暮しの背景と共に記録し家庭料理研究の基礎研究とするだけではなく、家庭や教育現場でも利用可能な資料とすることを目的とした。                                                    

【方法】本研究は日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき、平成24~26年度に大分県内8地域における昭和35~45年頃までに定着していた家庭料理について、60歳代以上を対象とし聞き書き調査を行なった。この調査内容から、大分県で食されていたおやつとその特徴について検討した。

【結果】大分県は九州の北東部に位置し、豊かな自然に恵まれ食材が豊富である。しかし、昭和35~45年頃は流通が発達していないため地産地消が行われ、地元で収穫された地粉やさつま芋を中心に、比較的短時間に蒸したりゆでたりしたものが多くみられた。地粉を使い蒸したものには「やせうま」「いきなりまんじゅう」「酒まんじゅう」、ゆでたものには「ゆで餅」、焼いたものには「じり焼き」などがあり、地粉とさつま芋を使ったものは「かんころ餅」「石垣餅」などがある。なお「かんころ(かんくろ)粉」はさつま芋を乾燥してから粉にしたもので、保存性を向上させている。例えば「やせうま」には平安時代の藤原鶴清麿と乳母の八瀬との逸話が、「いきなりまんじゅう」には、①短時間でいきなり作れるから ②不意の来客時でも間に合わせることができ、生の芋をいきなり調理するから、という名前の由来が伝っている。これらのことから、そのおやつが生まれた歴史や背景を推察することができる。現在、これらのおやつは家庭で作るというよりは地域おこし運動の一環として婦人会等のグループで作って、デパートやスーパーで販売されていることが多く、購入して食するようになってきている。

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