【目的】鹿児島県は,温帯から亜熱帯気候に属し自然豊かで変化に富んでおり,食文化もその中で発展してきた。「おやつ」も身近にある食材を用いた簡単に作れる昔懐かしいものが多いが,最近では家庭で作ることが少なくなってきている。聞き書き調査から,「おやつ」を地域ごとにまとめ,先人たちの知恵と工夫の中で育まれたおやつの特徴,材料や由来などを整理してみると,当時の暮らしぶりが伺える。次世代に伝え継ぐ目的で本調査を行った。
【方法】平成24~26年にかけて聞き書き調査した12地区を中心に「伝え継ぎたいおやつ」を抽出し地域ごとに分類した。調査できなかった北薩北部と南大隅地域においては,郷土誌やふるさとの食のレシピ集等の文献調査で補い資料とした。また「普段のおやつ」,「行事との関わりが深い郷土菓子」に分類して特徴を探った。
【結果】普段のおやつを材料別に分類すると「さつまいも」,「米」,「小麦粉」の順に多かった。さつまいもはふかし芋として主食に,またおやつとしても普段に食されていた。茹でて干した「こっぱ」は保存食として貯蔵され,「コッパ団子」や「こっぱ餅」にしている。南薩地域では,茹でたから芋にそば粉を入れてつき混ぜて丸めた「そまげ」は普段のおやつだったようである。また小麦粉では小麦粉だご(北薩地域)や,ふくれがし(ソーダ菓子)なども作っている。米はだんご類や餅としての利用が多い。行事ごとの郷土菓子にも特徴が見られ,保存性を考慮したもの(あくまき)など多彩である。だんごや餅を包む葉ものは,その地域に生息している植物を利用している。また離島では,南方系のおやつの特徴が伺える。地域によって呼び名が違うことは武家社会の名残であろうと考えられる。