日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2B-6
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口頭発表
「まぐろの漬け」における生醤油の調理特性
安藤 真美*北尾 悟*小幡 明雄
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抄録

【目的】生醤油は、火入れ(加熱処理)を行っていないため、鮮やかな色やおだやかな香りが特徴である。また、酵素類が失活していないため、食材に対してプロテアーゼ作用などを活用することも期待できる。昨年度までの研究において、生醤油に牛肉を浸漬後、調理したものは、通常の醤油を用いた牛肉に比べ軟らかくなることを明らかにした1。本研究では、醤油を用いた未加熱調理として“まぐろの漬け”をとりあげ、生醤油の調理特性を明らかにすることを目的とした。
【方法】キッコーマン製濃口生醤油(試験区)または濃口醤油(対照区)を用いて、醤油:みりん=1:1(v/v)に調製した調味液に、4℃、10・35・60分間浸漬処理したキハダマグロ(静岡県産:解凍)を試料とした。分析項目は、色調(測色色差計)、破断強度と摩擦特性解析(レオメーター)、たんぱく質組成(SDS-PAGE)、元素分析(元素分析装置付き走査型電子顕微鏡)および官能検査(評点法)である。
【結果と考察】色調は、試験区のまぐろの方が浸漬10分までは食材の色を活かして明るく鮮やかな色合いとなった。破断強度解析では、破断エネルギーは浸漬35分で試験区が有意に低い値を示し、弾性率の値も同様の傾向となったが、浸漬60分になると有意差がなくなった。摩擦特性解析の結果は、浸漬35分以降で対照区の初期および平均摩擦荷重の抵抗値が有意に低くなり、表面にぬめりが生じたことがうかがわれた。これら物性測定結果は、たんぱく質組成や元素分析から、生醤油に含まれる酵素によるまぐろの表面のたんぱく質が分解されたことに起因するものと考えられた。さらに官能検査における外観の良さやぬめり感の結果も同様の結果であった。また、味の良さ、総合評価でも試験区が有意に好まれた。
1)2015, 2016年度日本調理科学会

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