抄録
【目的】 世界的に食教育の必要性が認知され、必修科目としてあらたに食に関する科目を設定する国も出現している。そこで近年注目を集めているのがFood Literacyという食生活を円滑に営むために身に付けておくべき能力を示す概念である。世界のあらゆる地域において議論され始めているが、消費者としての視点も含めた、日常の食生活に関わる能力とするものなど多様な定義があり,Food Literacyにおける調理(Cooking)の位置づけは様々である。そこで、これらFood Literacyはどのような概念で定義されうるのかを検討し、さらにFood Literacyにおいて調理がどのように位置づけられているのかを概観することを本研究の目的とする。Food Literacyにおける調理の位置づけを明らかにすることによって、私たちが日常の食生活を営む上で身につけるべき食に関する能力を再考することができると考えられる。
【方法】 Springer Link およびEBOSCOhost を用いて入手可能となった文献(主に2010年以降のもの)を対象として、Food Literacyの定義を抽出し、さらにその中に調理がどのように位置づけられているのかを検討した。
【結果と考察】Food Literacyの概念は、地球に生きる生活人として理解しておくべき持続可能な社会を目指す立場のものから、個別具体的な食に関する能力を示したものまである。さらに調理そのものがFood Literacy の中で明確に位置づけられることは必ずしも多くなく、Food SkillをFood Literacyの主要な要素とすることが多い。ただし、Food Skillの中のCooking Skillの位置づけや調理の知識と技能の関係は十分に説明されていない。このことはFood Literacyにおいてのみならず日本の調理学習においても問題とされる点である。