日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1P-9
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ポスター発表
焼酎醸造に利用可能な液体麹の製造法
松尾 将平*三貝 咲紀*秋野 利郎畠山 敦高瀬 智禎森田 洋
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抄録

【目的】焼酎などの酒類醸造では「麹」の役割が不可欠である。従来の麹造りは、穀類の固体表面上に麹菌を生育させる固体培養法が用いられるが、発酵熱などの培養制御が困難である。そこで、培養制御が容易である液体培養法に着目した。液体培養法とは、水にその他栄養分を添加した液体培地に麹菌を生育させる培養方法である。しかし、固体培養法と比較すると、麹菌の酵素生産性が著しく低く、特に焼酎醸造で重要となる耐酸性α-アミラーゼ(Aα-A)がほとんど生産されない。そこで本研究では、Aα-Aが高生産する液体培養法の検討を行った。

【方法】菌株にはAspergillus kawachii NBRC 4308を使用した。改変SLS液体培地(米粉: 1.0 g、K2HPO4: 0.1g、KCl: 0.1 g、トリプトン: 0.6 g、MgSO4・7H2O: 0.05 g、FeSO4・7H2O: 0.001 g、ZnSO4・7H2O: 0.0003 g、CaCl2: 0.021 g、クエン酸: 0.33 g /100mL (脱イオン水) ) に初発胞子数1×107 個/mLになるように植菌し、30 ℃、200 rpmで72 h振とう培養を行った。Aα-A活性はα-アミラーゼ測定キット(キッコーマン社製)を用いて測定を行い、粗酵素液1 mLがN3- G5- β- CNPから1 μmolのCNPを遊離したときを1 Uと定義した。発酵試験は、Saccharomyces cerevisiae NBRC 2373を使用し19日間発酵させ、ろ過したろ液のアルコール度を測定した。

【結果】改変SLS液体培地のAα-A活性は1.0 U/mLであった。次に、改変SLS液体培地組成中のトリプトンをスキムミルク2.0 g、硫酸亜鉛塩をいりゴマ(白) 5.08 g、硫酸鉄塩は脱イオン水を水道水に代替し、本格焼酎醸造へ利用できる液体培地(SLS-SS培地)の検討を行った結果、13.4 U/mLの高いAα-A活性を示した。そして、固体麹とSLS-SS液体培地を用いて発酵試験を行った結果、固体麹では11.3 %、SLS-SS液体培地では10.6 %のアルコールが得られた。SLS-SS液体培地は、固体麹と同等のアルコール度数であったことから、SLS-SS液体培地による本格焼酎醸造への利用可能性が示された。

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