日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成30年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1C-4
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口頭発表
ベイクドミルク中のアレルゲンの消化吸収性
*和泉 秀彦山田 千佳子
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抄録

【目的】
 食物アレルギーの治療法として経口免疫療法(OIT)が行われているが、重症な牛乳アレルギー患者は牛乳を完全除去されてきた。しかし、最近ではそのような患者に対して、牛乳と小麦粉を混捏し加熱したベイクドミルク(BM)を使用してOITが行われている。これは、BMであれば牛乳の症状誘発閾値を超えた量を摂取でき、牛乳に比べ安全なためである。その科学的根拠は明らかではないが、BMにすることでアレルゲンの消化性の変化、もしくは吸収量の低下がその要因として考えられる。そこで、我々は牛乳アレルゲンであるカゼイン(CN)に着目し、BM中のCNの消化・吸収性について解析することを目的とした。
【方法】
 実験1:牛乳と小麦粉を混捏・加熱(140℃, 10分)しBMを作製した。また、加熱しないドウも作製した。各試料を凍結乾燥後、30分間ペプシン処理を行い、次いでパンクレアチン処理を経時的に行った。消化処理後の各試料からタンパク質を抽出した。抽出溶液中のCNをimmunoblotにて解析した。
 実験2:近交系マウスDBA/2を用いて、スキムミルク(SM)を投与するSM群およびBMを投与するBM群に分け、各試料を牛乳タンパク質量が揃うように調整し経口投与した。経口投与30分後の胃および小腸を摘出した。胃および小腸からタンパク質を抽出し、抽出溶液中のCNをimmunoblotにて解析した。また、採血を行い、得られた血清はinhibition ELISAにより血中CN濃度を解析した。
【結果および考察】
 実験1:消化処理後の試料をimmunoblotにて解析した結果、ドウ中のCNはペプシン処理後検出されなくなり、BM中のCNはパンクレアチン処理後も検出された。したがって、ドウと比較してBM中のCNは消化されにくいということが示唆された。
 実験2:マウスの消化管内容物のCNを解析した結果、SM群では胃及び小腸上部で検出されたが、BM群で検出されたのは胃のみであった。また、血中CN濃度を解析した結果、経口投与30分後、SM群に比べてBM群の方が低い傾向にあった。しかし、経口投与60分以降ではSMとBMに差はみられなかった。
 以上の結果より、BMはSMに比べ、胃内容排出速度が遅く、徐々に吸収されることで症状誘発閾値に達することなく安全に摂取できるのではないかと考えられる。

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