日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成30年度大会(一社)日本調理科学会
選択された号の論文の251件中1~50を表示しています
口頭発表
  • 由良 亮, 浜野 純, 萩原 勇人, 梅林 千恵子, 藤岡 美香, 山本 麻衣, 楠瀬 千春
    セッションID: 1A-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】新規卒業の栄養士が職場で求められる技術に、材料などの切り込みなどに要する包丁技能がある。この技能は、定められたスケージュール内で、大量の食材を正確に処理するために必要となる。この技術そのものは、十分な調理経験を経ることにより、形はどうあれ身に付けることができる。しかし、近年では食生活の変化から、調理済みの食品を利用する機会も増えており、家庭での調理経験が少ない学生が、栄養士養成施設にも入学をすることも増加している。
    栄養学は人体に関する健康科学的な学問であり、食品・調理に関する時間を多く取ることも難しい状況にある。その結果、近年では十分な練習時間を確保できないまま、就業先で技術不足に苦労をしている事例が散見されるようになった。 このような状況下において、技術向上を図る場合、的確な分析とそれに基づくアドバイスが必要と考えられる。そこで、本研究では学習者と熟練者の包丁技術の違いを明らかにし、練度を推定し、矯正を図る指標について検討した。
    【方法】本研究では、包丁の柄の前後に6軸モーションセンサー(加速度・角速度)を取り付けた装置を作成し、キュウリの小口スライス中の動作を記録した。調査では、処理速度を競うものではないこと、およびなるべく普段の調理状態を記録したいことを被験者に伝えた上で、1 mm 幅を心がけて切断するようお願いをし、その切断操作を記録した。被験者は、学習者(学生)104名、熟練者(3年以上包丁を使う業務を主として行なっていたもの)18名を対象とした。
    【結果】加速度の2次元プロットおよび角速度分布を確認した所、包丁を飛行機と見立てた場合、利き手が右手だと左ロール、左旋回、左手だと右ロール、右旋回をする傾向が認められた。これは、体軸に対して手首を内転しながら包丁操作をしている傾向にあることを示している。 この傾向は、学習者に多く見られており、熟練者ではほとんど見られなかった。熟練者では腕全体で包丁を利用することを心がけているために、手首を動かさないのに対して、学習者では手首の運動で操作をしているものと考えられる。 また、加速度の高速フーリエ変換(FFT)パワースペクトルは、熟練者では明確な倍音成分が確認できるのに対し、学習者ではあいまいであり、雑音成分が目立つ傾向にあった。つまり、熟練者は一定の軌道で正確に反復運動しているのに対し、学習者は軌道が一定ではないことが考えられる。 以上の結果により、本装置を用いて得られるロール・ヨーの傾向及び、FFTの雑音成分から、熟練度を測ることができる可能性が示された。
    本研究はJSPS科研費 JP17K19942の助成を受けたものです。
  • 清水 彩子, 丸山 智美, 河原 ゆう子, 伊藤 久敏
    セッションID: 1A-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 わが国ではエネルギーとして火を利用し、生活の中でその扱いを体得してきた。しかし近年、火によらない加熱機器を使用する家庭が増えたことや学校での調理実習時間の縮小により、子どもが火の扱い方を学ぶ機会が減少している。本研究は、学校や家庭での「火」の扱いを体得する機会の現状を明らかにすることを目的とした。
    【方法】 学校教育の現状は、愛知県下の小・中・高等学校を対象に、学校設備、教員から見た児童・生徒の火に対する意識など21項目を調査した。家庭の現状は、東海3県の小学校5~6年生の子をもつ30~50歳代の母親218名を対象に、母親と子どもの火との接触機会など33項目を調査した。
    【結果】 有効回答数は、小学校93校、中学校178校、高等学校97校、母親218名であった。すべての学校に家庭科室が設置され、98%以上の学校でガスコンロが導入されていた。火の扱いに対する教員の回答として、「火を扱えることは大事なスキルである」は89.7%、「火の扱い方はある程度、家庭で教える必要がある」は91.3%であった。また、32.3%が「火を扱わせる授業は運営が難しい」と回答しており、小、中学校では外部の教育支援プログラム活用の意向が強かった。一方家庭では、子どもが火を扱う機会はほぼガスコンロやカセットコンロを使用した調理に限られ、「学校などで火の扱い方を教えてもらいたい」と89.4%の母親が回答した。教員、母親共に学校教育と家庭で火の教育が必要であるとの認識はあるが、教員は家庭で、母親は学校での教育を期待していることが示された。「火」の扱いを体得する機会が少ない現状ならびに、火を扱う教育が不足している課題が見いだされ、学校・家庭外での教育支援プログラムが求められていることが示された。
  • -高校家庭科教科書の用語分類を中心に-
    福留 奈美, 池田 彩子
    セッションID: 1A-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】先行研究では、家庭科・理科の教科書で取り扱われるたんぱく質関連用語は、小・中学校課程に比べ高校教科書で新出語彙が急増することを確認した。新出語彙の中でも、用語のタイプによって理解・習得のしやすさには違いがあると考えられる。本研究では、高校家庭科教科書に登場するたんぱく質関連用語を取り上げ、大学生の認知度と用語に対する意識の違いにより、1)用語の分類を行うこと、2)学習支援が必要な語彙のタイプを明らかにすることを目的とした。

    【方法】管理栄養士養成課程の大学生(以下、栄養系)とその他の専攻の大学生(以下、非栄養系)を対象に56用語について、認知度を3段階〔意味を知っている/聞いたことはあるが詳しくは知らない/知らないし聞いたこともない〕で問う質問と、2)一般的な用語か専門用語〔一般向け/専門家向け〕かを問う質問、以上2つの質問についてアンケート調査を行った。非栄養系228名と栄養系173名の調査結果からクラスター分析を行い、語群に分けて考察した。

    【結果】56用語の認知度は、非栄養系よりも栄養系で有意に高かった。高校教科書で既習済みの内容であっても、その知識の定着に対する意識(本調査では認知度の結果)は、専門分野として学ぶか否かで異なっていた。一方、一般的な用語か専門用語と思うかについては、非栄養系/栄養系での認識は近く、有意差があったのは物質名等一部の語彙のみであった。2つの質問に対する回答結果より、用語は4つの語群に分けられた。最も認知度の低い語群には、必須アミノ酸やたんぱく質の物質名等、カタカナ表記の外来語が多く含まれていた。また、栄養系であっても、家庭科に特徴的な用語だと考えられる「アミノ酸評点パターン」に対する認知度は低く、外来語の物質名と教科特有の用語については、理解を促すための重点的な指導の施策が必要であると考えられた。
  • 竹下 温子, 鈴木 青葉, 斎藤 梢
    セッションID: 1A-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】静岡県の郷土料理である「黒はんぺん」は焼津港で豊漁なサバやイワシのすり身で作られ、一般的な白い「はんぺん」とは異なり、魚独特の臭いと強い歯ごたえを持つ。我が国の魚摂取量は1990年をピークに減少の一途をたどり、小・中学生が嫌いな給食メニューのトップが「魚全般」となるほど魚離れが深刻化し、魚を嫌いな理由に「臭い」が挙がる。静岡県の特産品である緑茶は、多くの効能を有し、抗菌・消臭効果の特性は天然添加物として利用できる。そこで我々は静岡県の郷土料理と特産品をコラボさせた新商品の開発を目指すと共に、中学校家庭科教材としての有用性を附属島田中学校での実践をとおして検証した。

    【方法】緑茶黒はんぺんは、緑茶の形状と種類を検討し、6種類を選定した。緑茶の抗菌性を探るため、冷蔵保存期間における一般生菌数について標準寒天培地法を用い測定した。次に中学校家庭科教材への検討は、静岡大学教育学部附属島田中学校1学年118名に対して「日常食の調理と地域の食文化」の分野を利用し、調理実習を含めた2時間続きの授業を展開した。評価には事前・事後アンケートを用い、統計処理にて解析をおこなった。

    【結果】緑茶黒はんぺんは、3番茶の粉末が最も強く抗菌性が示されることが明らかになり、緑茶の機能性を生かした新商品の開発へ期待が高まった。次に家庭科の授業実践について、本授業が面白かったと回答したものは86%で普通も含めると96%を超え、好評であった。本授業の難易度についてはA,B組よりC組が難しいと感じていたが、「面白かった」の回答率が最も高かったのはC組であった。これは事前に理科の授業で魚の解剖を学んでいたか否かが、難易度および興味関心に影響を与えたと考えられた。
  • 津田 和加子, 菊池 節子
    セッションID: 1B-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】江戸期の饗応献立の変遷についていくつかの報告があるが,福島県中通り北部のものはこれまでになかった。そこで福島市飯坂町の旧家堀切家の江戸期婚礼献の構成とそれに供されている料理や食材に注目し,その特徴について報告することを目的とする。

    【方法】堀切家寄託資料(福島県立博物館)と堀切真一郎家文書,堀切三郎家文書(福島県歴史資料館)中の江戸期婚礼献立を中心に資料とした。

    【結果】豪農豪商といわれ大庄屋でもあった堀切家の婚礼献立の中で,年時が明確であるものが5件存在した。A寛政8(1796)年10代目治安、B文政2(1819)年治安の次女ふさの聟入り婚、C文政10(1827)年11代目治之、D文政11(1828)年ふさの再婚,E嘉永5(1852)年12代目治宣の献立を比較した。膳部の構成を見るとAとEは,三汁七菜,Cは三汁共七菜であった。これら三の膳の献立は,後に当主になる人物の婚礼である。BとDは,二汁共五菜であった。これらの献立に共通して着座の後に茶菓があり,酒の儀礼に雑煮と鯛鰭の吸物が供されていた。Aのみ破損のため,雑煮からの記載であった。Aは酒の儀礼に続き膳部があり,中酒、酒宴、茶菓の順であった。Eは、酒の儀礼に続いて酒宴があり,膳部,中酒,茶菓となっていた。半世紀の間に,食事形態が推移していく様子が見られた。珍しい食材としては、漢方の川貝(センバイ)や天門冬(テンモンドウ),魚の軟骨(鮫氷や蕪骨)を供していた。また現在は郷土料理となっている「むくり鮒:山形県置賜地方」や,「つと豆腐:会津地方」、「鮟鱇の共和え:福島県浜通り地方」,「けいらん:旧南部藩」などが見られた。菓子類では「いが饅頭:埼玉県北部」「がんじきくるみ:新潟県新発田市」などがあった。
  • 堀 光代, 西脇 泰子, 長野 宏子
    セッションID: 1B-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】岐阜市の長良川では鮎を獲る漁法に伝統を受け継ぐ「鵜飼」がある。「清流長良川の鮎」は2015年に世界農業遺産として認定され、現在、岐阜市長良川の鵜飼いは、宮内庁式部職の6名の鵜匠が行っている。鵜匠家ではお世話になった方に感謝の気持ちを込めて「鮎なれずし」を作り、年末に配る風習が残っている。伝統的な「鮎なれずし」を手作りしている鵜匠家から食材の用い方、作り方の特徴を調査し、記録に残すことを目的に調査を行った。
    【方法】平成26年から平成29年にかけて鵜匠家とその縁者に聞き書きを行い、「鮎なれずし」の作り方等の調査を行った。鮎の準備、下処理、および作成方法の観察と記録を行った。
    【結果】「鮎なれずし」は年に1回作られ、11月頃に産卵のために川を下る「落ち鮎」の雄を用いていた。全工程は、①鮎の塩漬け、②水洗い(塩抜き)、③漬け込み、④完成の4工程である。①鮎の下処理後の塩漬けは、約1ケ月間常温保存のため、気温が低くなる時期から開始していた。②水洗い(塩抜き)は、流水で行い、塩の加減は気候を考慮し、食して判断していた。③漬け込みは、桶の下部に飯(ふりめし)を敷き、塩抜きした鮎の腹にも飯を詰めながら漬け込んでいた。桶1段に約15尾の鮎を並べ、それを4段重ねていた。重ね終わりには、竹皮・落とし蓋・枕木を順に乗せ、上に重石をし、軒下等の日陰に1ケ月程度保存した。重石で水が上がるため、その状態を見ながら乾かないように水を補充していた。④完成前に水を捨てて逆押しを行い、半日ぐらいかけ十分な水切りを行った。完成までに約2ケ月をかけて作られる「鮎なれずし」は、伝統的な製法と先人の知恵が多くみられ、鵜匠家の食文化を継承するものであった。
  • 峰村 貴央, 鈴木 亜夕帆, 渡邊 智子, 梶谷 節子, 中路 和子, 柳沢 幸江, 今井 悦子, 石井 克枝, 大竹 由美
    セッションID: 1B-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じて行った調査から,千葉県の主菜についてその特徴を「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」は特別企画で発表した。ここでは、千葉県の主菜と地域特性の関連性について報告する。
    【方法】千葉県を9地域に区分し明らかにした主菜について地域特性との関連を検討した。
    【結果】千葉県は太平洋に突き出た半島で三方を海に囲まれ、九十九里地域の砂浜域や外房地域の変化に富んだ岩礁域、浅海漁場である東京湾など海岸線は変化に富んでいる。沖合域には黒潮、親潮が交差し豊かな漁場と多様な水産資源に恵まれている。この海域特性に応じ、多種な沿岸・沖合漁業が発達しさらに水産加工業が発達してきた。また、利根川、江戸川とこれに連なる印旛沼や手賀沼のほか、各地の中小河川でさまざまな漁業・養殖業が行われている。千葉県の漁業は5つの地域(銚子・九十九里、外房地域、内水面地域、東京内湾地域、内房地域)に区分され、主たる漁獲魚は地域で異なっている。例えば、銚子・九十九里はイワシ、サバ、サンマ、キンメダイ、ハマグリ、ナガラミ、外房は、さざえ、アワビ、イセエビ、カツオ、イカ、キンメダイなど、である。これらのうち、サンマが、9地域で共通して食べられていることは、サンマの漁獲量が多く安価であり、刺身、煮つけ、ゴマ漬けなど様々な料理が古くから行われてきたことによる。漁港の周辺の地域や、流通に便利な地域では、魚は刺身を主とし、焼き魚、煮魚など一般的な料理に加え、ゴマ漬け、からなますなど甘酢で調味し鮮度を保つ料理も行われてきた。
     また、安房郡嶺岡地域は日本酪農発祥であり畜肉とあわせ牛乳生産が行われ、牛乳豆腐が作られてきた。
  • 松本 美鈴, 阿部 芳子, 坂口 奈央, 柘植 光代, 時友 裕紀子
    セッションID: 1B-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】山梨県の郷土料理ほうとうは、塩を加えずに麺を作り、野菜などの副材料と一緒に汁の中で煮込んでつくる麺料理である。文献調査、聞き書調査およびアンケート調査により、ほうとうが時代とともにどのように変遷してきたかを明らかにするとともに、アンケート調査によりほうとうが現代の食生活に受け継がれてきた要因を考察する。
    【方法】文献調査は、社団法人農山漁村文化協会刊行『日本の食生活全集』聞き書山梨の食事を主要資料とし、大正末期から昭和初期にほうとうがどのように食べられていたかを捉えた。聞き書調査は、日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、山梨県の生活環境と家庭料理について平成25~27年に実施した。アンケート調査は、山梨県在住の家事担当者および中学校・高等学校の生徒を対象とし、ほうとうに関する質問用紙を地域の協力者に郵送した。930部が回収された。
    【結果】文献調査の結果、大正末期から昭和初期、地粉で打った自家製麺と手近にある野菜、いも、きのこ等の複数の食材を一緒に汁の中で煮込んでほうとうを作っていた。ほうとうは山梨県の日常の夕食として一年を通して食べられていた。聞き書調査から、昭和30年代もほうとうは日常の夕食として食べられていたが、副材料には、油揚げ・豚肉・鶏肉を用いる地域が出現したことが分かった。アンケート調査から、現在のほうとうは、秋から春の寒い時季の日常の夕食として食べられていること、ほうとうに入れる副材料は野菜・いも・きのこに加えて豚肉や鶏肉などの動物性食品が多用されていることが分かった。山梨県の郷土料理ほうとうが受け継がれてきた要因として、市販麺の利用など調理の簡便性が示唆された。
  • 近藤(比江森) 美樹, 上原 穂野香
    セッションID: 1C-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】エンドウの古代品種として知られる通称ツタンカーメンエンドウは、主に未熟な豆(生豆)を食する実エンドウである。生豆はウスイエンドウなどと同様に緑色を呈するが、加熱して保温することで赤く着色する特徴を有する。さらに、DPPHラジカル消去活性を指標とした抗酸化性を示すが、調理による抗酸化性の変化は知られていない。また、乾燥豆の抗酸化性の情報もない。本研究では、当該エンドウの抗酸化性に及ぼす調理の影響について検討した。
    【方法】2016年5月に和歌山県で収穫されたツタンカーメンエンドウ及び対照としてウスイエンドウを莢付きで購入し、莢を除いた生豆を凍結保存した。さらに、同年秋に乾燥豆を入手した。凍結生豆は解凍し、乾燥豆は一晩水に浸漬した後、「煮含め」および「茹で」の2種類の方法で調理した。調理済みの豆を凍結乾燥後に粉砕し、50%エタノール抽出液を調製した。それらの抗酸化性をDPPHラジカル消去活性により評価し、ポリフェノール量をフォーリン・チオカルト法によって定量した。
    【結果】ツタンカーメンエンドウの生豆の抗酸化性は、ウスイエンドウの生豆に対して有意に高値を示したが、乾燥によって著しく低下した。DPPHラジカル消去活性とポリフェノール量は高い正の相関を示し、抗酸化物質はポリフェノールであると考えられた。生豆の抗酸化性は、「煮含め」では調理後も維持されたが「茹で」では有意に低下し、茹で汁も抗酸化性を示した。よって、茹で汁へのポリフェノールの流出は抗酸化性の低下をもたらすが、加熱による抗酸化性への影響は小さいことが示された。従って、ツタンカーメンエンドウの抗酸化性に着目した場合、乾燥豆よりも生豆の利用が有効であり、含め煮やスープとして煮汁も利用する料理に適することが明らかになった。
  • 東 真衣, 鮫島 由香, 松井 徳光
    セッションID: 1C-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 野菜や果物など多くの食品は酸化して退色・褐変すると商品価値が低下するため、美しい色を保たせる目的で抗酸化剤が使用されている。従来、食品の酸化防止剤には亜硫酸塩やBHA、BHTが用いられてきたが、安全性などに問題があり、これらに代わる安価で使いやすい抗酸化剤の開発が望まれている。そこで本研究では、抗酸化活性に優れたアミノ酸の一種で、安全性や汎用性も高いエルゴチオネイン高生産食用きのこのスクリー二ングを行うと共に、食品利用への検討を試みた。

    【方法】 エルゴチオネインの生産は、食用きのこの菌糸体をオートクレーブ滅菌後の鰹出し汁液体培地100mlに植菌し25℃、21・42日間の回転振とう培養で行った。先行研究においてスエヒロタケ菌糸体を用いて行ったグルコース[3%]、アミノ酸(メチオニン・システイン・ヒスチジン[各10mM])、酵母エキス[3%]を添加した培地が最も高いエルゴチオネイン量を示したため、同条件のものを添加した。抗酸化活性は化学発光法、エルゴチオネインはHPLCを用いて測定した。

    【結果】 最もエルゴチオネインを生成したきのこ菌糸体は42日間回転振とう培養したタモギタケTa-1で、乾燥菌糸体1gあたり0.931mg/gであった。このことからエルゴチオネイン生成に適した食用きのこはタモギタケTa-1であると判断した。また、鰹出し汁液体培地(100ml)からの乾燥菌糸体の回収重量は1.87gであった。よって、液体培地100mlで得られるエルゴチオネイン量は1.74mg/100mlであり、他のきのこよりも多くエルゴチオネインを生成した。また、抗酸化活性はブナシメジBn-2が最も高かったがエルゴチオネイン量は0.213mg/gであり、抗酸化活性にはエルゴチオネイン以外の生成物質が影響したことが示唆される。今後、無細胞抽出液による食品利用への検討を試みる。
  • 山田 直史, 中桐 実奈美, 山脇 香菜, 新實 祐理, 伊東 秀之, 宗歳 日光里, 山崎 勤, 中西 徹, 中村 宜督
    セッションID: 1C-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    ハーブとして料理やアロマオイルに利用されるローズマリーは,古くから薬草として含有成分の機能が利用されていた。有名な伝承として,手足のしびれを患っているハンガリーの王妃に,修道士らが治療薬としてローズマリーをアルコールに漬け込んだものを勧めたところ、王妃はみるみる回復されたうえ、みるみる若返り、70歳という年齢で20代のポーランド王に求婚されたというものがある。本研究では,ローズマリーの抽出物(溶媒:水またはエタノール)を用いて,抗酸化活性,メラニン生成阻害効果,抗糖化活性およびがん細胞増殖抑制効果について測定した。
    【方法】
    ローズマリー葉を水またはエタノールに20分漬け抽出液とした。抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性法で,メラニン生成阻害効果はドーパとマッシュルーム由来チロシナーゼを用いて,抗糖化活性はグルコースとアルブミンの糖化反応によるAGEs生成量測定で,がん細胞はMCF-7(乳がん細胞株),MDA-231(乳がん細胞株),SW-982(滑膜肉腫株)を用いた。
    【結果】
    エタノール抽出物では,すべてで高い機能性が確認された。このような機能性の影響から,伝承のような若返りの言い伝えが残っているのではないかと憶測される。
  • 和泉 秀彦, 山田 千佳子
    セッションID: 1C-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     食物アレルギーの治療法として経口免疫療法(OIT)が行われているが、重症な牛乳アレルギー患者は牛乳を完全除去されてきた。しかし、最近ではそのような患者に対して、牛乳と小麦粉を混捏し加熱したベイクドミルク(BM)を使用してOITが行われている。これは、BMであれば牛乳の症状誘発閾値を超えた量を摂取でき、牛乳に比べ安全なためである。その科学的根拠は明らかではないが、BMにすることでアレルゲンの消化性の変化、もしくは吸収量の低下がその要因として考えられる。そこで、我々は牛乳アレルゲンであるカゼイン(CN)に着目し、BM中のCNの消化・吸収性について解析することを目的とした。
    【方法】
     実験1:牛乳と小麦粉を混捏・加熱(140℃, 10分)しBMを作製した。また、加熱しないドウも作製した。各試料を凍結乾燥後、30分間ペプシン処理を行い、次いでパンクレアチン処理を経時的に行った。消化処理後の各試料からタンパク質を抽出した。抽出溶液中のCNをimmunoblotにて解析した。
     実験2:近交系マウスDBA/2を用いて、スキムミルク(SM)を投与するSM群およびBMを投与するBM群に分け、各試料を牛乳タンパク質量が揃うように調整し経口投与した。経口投与30分後の胃および小腸を摘出した。胃および小腸からタンパク質を抽出し、抽出溶液中のCNをimmunoblotにて解析した。また、採血を行い、得られた血清はinhibition ELISAにより血中CN濃度を解析した。
    【結果および考察】
     実験1:消化処理後の試料をimmunoblotにて解析した結果、ドウ中のCNはペプシン処理後検出されなくなり、BM中のCNはパンクレアチン処理後も検出された。したがって、ドウと比較してBM中のCNは消化されにくいということが示唆された。
     実験2:マウスの消化管内容物のCNを解析した結果、SM群では胃及び小腸上部で検出されたが、BM群で検出されたのは胃のみであった。また、血中CN濃度を解析した結果、経口投与30分後、SM群に比べてBM群の方が低い傾向にあった。しかし、経口投与60分以降ではSMとBMに差はみられなかった。
     以上の結果より、BMはSMに比べ、胃内容排出速度が遅く、徐々に吸収されることで症状誘発閾値に達することなく安全に摂取できるのではないかと考えられる。
  • 山田 加奈子, 白 ろ, 宮崎 直人, 吉元 寧, 松枝 博明, 川邊 清隆, 西田 毅, 松田 寛子, 白井 隆明, 島本 国一
    セッションID: 1D-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、カボチャの主要品種である「えびす」のでん粉が果実内で急速に糖化し、食味が変化することを報告している。近年、消費者志向の変化をうけて、粉質感が強い品種の栽培が増えている。8品種のカボチャの貯蔵中の成分変化および嗜好評価をおこない、品種の特性を明らかにすることを目的とした。
    【方法】北海道の同一圃場で収穫された5品種(えびす、北渡交4号、雪化粧、ジェジェJ、TC2A)および産地より調達した収穫日が既知の3品種(くりゆたか、くり将軍、プリメラ115)のカボチャをそれぞれ10℃および常温で貯蔵したものを試料として用いた。各試料について、収穫直後、1ヶ月または2ヶ月後の固形量や遊離糖組成を分析し、でん粉を抽出してラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)粘度特性などを測定した。また、各貯蔵期間における全ての試料を用い、カット後に蒸煮し冷凍貯蔵した試料を解凍して「パンプキンサラダ」を調製し官能評価をおこなった。
    【結果】固形量は、経時的に減少し、でん粉の分解と呼吸により水分が増加したと考えられる。一方の遊離糖は、経時的に増加したが、還元糖とショ糖が同時に増加する「えびす」型と還元糖の増加が少なくショ糖を増加する「北渡交4号」型の2タイプが見られた。
     抽出でん粉の6%RVA粘度は、「えびす」では、貯蔵により粘度が低下したが、他の品種では、特有の粘度特性を持つが、貯蔵中の変化が小さかった。サラダの嗜好では、貯蔵と共に糖化が進んだ甘いだけ品種よりも、硬さや甘さのバランスが取れた品種の方が評価が高い傾向にあった。
  • 大須賀 彰子, 中川 裕子, 川合 丈志, 藤井 恵子, 大越 ひろ
    セッションID: 1D-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】マッシュポテトに液状油を加えると食べやすくなるが、調製後の油脂の分離等扱う上で課題がある。そのため、調製後の安定面から固形脂の使用が主流となっている。そこで本研究では、調製方法の異なる固形脂を添加したマッシュポテトの力学的特性と食べやすさについて検討した。
    【方法】ポテトフレークに温水を加え、マッシュポテトを調製した。マッシュポテトに加える固形脂は、油脂固化剤を5%添加して調製した固形脂、キャノーラ油を固形状に加工したゲル状油脂およびショートニングの3種とし、対照としてサラダ油を用いた。それぞれマッシュポテトに固形脂10%添加したものを試料とし、テクスチャー特性、ばね緩和法による降伏応力、動的粘弾性を測定した。また若年女性を対象にシェッフェの一対比較法による官能評価を実施した。試料温度は30℃とした。
    【結果】テクスチャー特性の付着性と凝集性および降伏応力は、サラダ油添加試料に比べて、固形脂添加試料は有意に高値を示したが、固形脂添加試料間では、油脂固化剤調製油脂添加試料が他の固形脂添加試料に比べて、有意に低値を示した。動的粘弾性は貯蔵弾性率がいずれの試料もほぼ等しい値を示したが、損失弾性率はサラダ油添加試料と油脂固化剤調製油脂添加試料が他の固形脂添加試料に比べて低値を示した。官能評価では、かたさはいずれの試料も有意差は認められなかった。べたつき感と残留感は、サラダ油添加試料と油脂固化剤調製油脂添加試料が他の固形脂添加試料に比べて、有意にべたつき感と残留感が少ないと評価された。このことより、油脂固化剤調製油脂添加試料はサラダ油添加試料の力学的特性と近く、3種の固形脂の中では食べやすさの観点から最も適していると考えられた。
  • 松田 寛子, 中澤 暁輝, 田中 麻美子, 宇田川 瑛里, 西田 毅, 白井 隆明
    セッションID: 1D-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】ジャガイモは指定野菜の一つであり、その代表的な料理にポテトサラダがある。ジャガイモの主成分は澱粉であるが、その中には血糖値の上昇抑制作用などを有するレジスタントスターチ(RS)が含まれている。RS生成には温度が大きく関与しているが、調味料添加などの調理過程におけるRS量変化に関する知見は乏しい。そこで本研究では、ポテトサラダの調理方法を基に、マヨネーズおよびその構成調味料の添加がジャガイモ中のRS生成に与える影響を検討した。

    【方法】基礎知見を得るために、ジャガイモ由来の精製澱粉を用いると共に、温度処理前に水または調味料(マヨネーズ・穀物酢・サラダ油・レシチン)を添加した。その後、無処理(1)、100℃20 分加熱(2)、100℃20 分加熱後6℃24 時間(3)、100℃20 分加熱後6℃48 時間(4)、120℃20 分加熱(5)、120℃20 分加熱後6℃24 時間(6)、120℃20 分加熱後6℃48 時間(7)の条件で温度処理し、凍結乾燥したものを試料とした。試料のRS量を酵素処理法により測定した。また、RS量が変化した処理条件の試料において、食後の血糖値上昇度を示す予測グリセミック・インデックス(eGI値)の測定を行った。また、温度処理前後添加の検討をジャガイモパウダーを用いて行った。

    【結果】水添加と比較したRS量の変動として、マヨネーズ添加では48時間冷却(4、7)において、サラダ油とレシチン添加では全ての温度処理において、有意に増加した。また、eGI値とRS値間には弱い負の相関関係があることが示唆された。ジャガイモパウダーについては現在検討中である。
  • 秋山 聡子, 池田 昌代, 鈴野 弘子
    セッションID: 1D-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】野菜にはポリフェノールやミネラルが多く含まれており、その生理的機能が近年明らかにされている。これらの成分は喫食者の疾病などの状況によっても望まれる摂取量が異なる。また、野菜を摂取するためには非加熱や加熱調理を行うが、これによりポリフェノールやミネラルは変化する。そのため、異なる調理操作後の野菜に含まれるポリフェノールやミネラル量の把握は重要である。そこで本研究では、キャベツに異なる調理操作を施し、総ポリフェノールおよび各種ミネラルの残存率の違いを明らかにすることを目的とした。

    【方法】キャベツは茨城県稲敷郡阿見町産の「月光」を使用した。料理は「せん切りの生」と「3cm四方の炒め」を設定した。「せん切りの生」は、切栽後に浸漬する水量を5倍または10倍とし、時間を1分、3分または5分とした。「3cm四方の加熱」は、切栽後に加熱する時間を3分間とし、加熱方法として炒め3分、炒め1分とゆで2分、炒め2分とゆで1分、ゆで3分を設定した。調理後のキャベツに含まれるクロロゲン酸総量をFolin-Denis法にて測定し、総ポリフェノール量とした。また、ミネラルは、原子吸光光度法にてカリウム量を、モリブデンブルー吸光光度法にてリン量を測定した。残存率は切栽のみのキャベツに含まれる量を100%とし算出した。
    【結果】「せん切りの生」の総ポリフェノールの残存率は、有意な差が認められなかった。カリウムの残存率は、10倍の5分は5倍の1分に比べ低かった。リンの残存率は、水量に関わらず5分浸漬群が低かった。「3cm四方の加熱」の総ポリフェノールとカリウムの残存率は、炒め3分が他群に比べ高く、ゆで3分は他群に比べ低かった。リンの残存率は、ゆで3分が他群に比べ低かった。
  • 昇温速度の違いによる熔融状況の差異
    今津 有稀, 坂本 薫, 森井 沙衣子
    セッションID: 2A-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】グラニュ糖は、結晶性の物質であり純度が99.9%以上と高いが、熔融温度が異なるものがあることを報告してきた。すでに、日本薬局方の融点測定法に基づき、昇温速度を1°C/minとしたときのグラニュ糖の熔融過程を自動融点測定装置を用いて観察し、熔融開始温度や熔融終了温度に大きな差があることや、温度による透過率の推移が異なることを確認した。しかし、実際の調理加工における昇温速度は、1°C/minよりも速いと考えられる。そこで本研究では、実際の調理を想定した昇温速度で加熱した際の砂糖の熔融状況や試料による差異について検討を行った。

    【方法】自動融点測定装置(MP-70、メトラー・トレド製)を用い、昇温速度は調理を想定し10°C/min、加熱温度を130°Cから230°Cまでとして透過率を測定した。試料には精糖会社や工場、ロットが異なるグラニュ糖39種類を用いた。

    【結果】1°C/min昇温のときに153.3°Cで融けはじめたグラニュ糖が、10°C/min昇温のときには174.8°Cで融けはじめ、昇温速度が速くなると熔融開始温度が上昇する現象が観察された。熔融終了温度も同様に、昇温速度を上げることで上昇した。これらの現象は、全ての試料において確認されたが、その温度の差は、グラニュ糖の種類により多様であった。
     砂糖の加熱熔融特性は、調理品の品質に質的影響を与える。しかし、砂糖に加熱熔融特性の異なるものがあることはあまり知られていない。砂糖には熔融温度が大きく異なるものがあり、昇温速度によってその温度が異なることが明らかとなった。調理における砂糖の選択は、調理品の品質を左右すると考えられた。
  • 北川 莉帆, 高 鈺晴, 片山 弘, 小幡 明雄, 菅原 悦子
    セッションID: 2A-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】火入れ醤油にみりんと砂糖を混合した調味液は、加熱によって香気の強さや多様性が増すことをすでに報告した1)。また、生醤油調味液のSAFE法を用いた結果を昨年度の本大会で報告したが、ヘッドスペース香気成分の変動において不明な点があった。今回は、みりんのみを混合した醤油調味液(以下調味液)と水のみを混合した醤油水希釈液(以下希釈液)のヘッドスペース香気成分を比較し、加熱による香気変化を解析し、調味液におけるみりんの役割を明らかにすることを目的とした。

    【方法】市販の生醤油とそれを通常の火入れ条件で加熱した火入れ醤油に、等量のみりん(ともにキッコーマン社製)または蒸留水を混合し調味液と希釈液を調製した。さらに、これら試料をそれぞれフライパンで加熱し、計8種の試料を調製した。これらのヘッドスペース香気成分をSPME法で吸着し、GC-O分析を行うとともに、醤油特有のエチルエステル類とチオール類を既法により定量した2

    【結果】GC-O分析により、両醤油の調味液と希釈液から感知できるヘッドスペース香気成分数は加熱によりすべてで減少したが、特に調味液での減少が大きかった。生醤油で特徴的な果実様香気のエチルエステル類の濃度は生醤油調味液やその希釈液で高かったが、加熱後はすべてで検出限界以下になった。醤油の加熱香気を特徴づけるチオール類の濃度は、加熱により火入れ醤油調味液で有意に高くなった。以上の結果から、みりんは、共存するエタノールがヘッドスペース中の香気成分の加熱による揮発を促進するとともに、新たな香気成分の生成に寄与する可能性が示唆された。今後AEDA法を用い、加熱により寄与度が変化する香気成分を特定する。1)日本調理科学会誌, 48, 249(2015) 2)Biosci. Biotech. Biochem., 81, 168(2017), 81, 1984(2017)
  • 安藤 真美, 北尾 悟, 畠中 芳郎, 小幡 明雄
    セッションID: 2A-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】生醤油は火入れを行っていないため、鮮やかな色で香りが穏かなだけでなく酵素が残存する特徴がある。我々は、これまでプロテアーゼに着目し、魚や肉類の調理に生醤油を用いると火入れしている普通醤油に比べ、物性が軟化することを明らかにした1)。本研究では澱粉への影響が考えられるa-アミラーゼに着目し、米炊飯における生醤油の調理特性を明らかにすることを目的に検討した。
    【方法】キッコーマン製生醤油(試験区)または普通醤油(対照区)を用いて、米(滋賀県産コシヒカリ)に対する塩分濃度を0%、1.5%、2.5%になるように調味液を調製し、浸漬中か浸漬後に添加して6種の米飯を作成した。分析項目は、水分量(常圧加熱乾燥法)、糊化度(グルコアミラーゼ第二法)、色差(測色色差計)、a-アミラーゼ活性(キッコーマン製キット)、物性(破断強度解析:一粒法)、直接還元糖量(ソモギー変法)および官能検査(評点法)である。また、動的粘弾性の変化も測定した。
    【結果】米飯の水分量、糊化度で醤油の違いによる差はなかった。色調は、試験区は明るく赤みの少ない淡い色になった。醤油のa-アミラーゼ活性は、試験区0.259U/ml、対照区0.000U/mlであった。物性は、2.5%塩分の場合、試験区の米飯が有意に柔らかくなり、この結果は官能検査結果と相関していた。更に、試験区は還元糖量が有意に多くなった。また、動的粘弾性でも試験区は経時的に粘度が低下し、醤油の添加濃度が高くなるほど顕著であった。以上の結果から、生醤油に含まれるa-アミラーゼなどの糖質分解酵素は、炊飯時に米澱粉に作用し物性の変化を起こすことがわかった。今後、米料理などへの応用検討を進める予定である。1)2015, 2016, 2017年度日本調理科学会大会
  • 佐藤 裕美, 佐藤 瑶子, 熊谷 美智世, 香西 みどり
    セッションID: 2A-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】調味液は料理に応じて様々な濃度のデンプンでとろみづけされ、調味液の粘度が高くなると調味料成分の拡散が遅くなることが経験的に知られているが、この現象を拡散係数と粘度の観点から調べた報告はない。そこで本研究では、濃度や種類の異なるデンプンでとろみづけした食塩水にダイコンを浸漬し、食塩水の粘度とダイコン中の食塩のみかけの拡散係数(以下拡散係数)の関係を把握することを目的とした。
    【方法】2cm角のダイコンを試料として重量比で10倍量のとろみづけした1.2%食塩水に浸漬し、試料の食塩濃度をモール法により0~16hの間で経時的に測定し、プログラム計算により拡散係数を算出した。とろみづけには片栗粉またはコーンスターチを用い、食塩水における濃度は各々0(対照)、1、3および%とした。浸漬温度は、20、50および70℃とし、拡散係数の温度依存性をアレニウスの式で表した。各浸漬液の粘度はE型回転粘度計で測定し、デンプン糊液の粘度に及ぼす食塩の影響も調べた。粘度の温度依存性をアンドレードの式で表した。
    【結果】いずれの浸漬液でも拡散係数はアレニウスの式に従った。デンプン濃度が高いほど拡散係数は小さくなり、同じデンプン濃度では、コーンスターチの方が片栗粉よりも食塩の拡散係数が大きかった。片栗粉糊液の粘度は、食塩添加により無添加の1/10以下に大きく低下したが、コーンスターチ糊液の粘度は食塩添加による影響は見られなかった。浸漬液の粘度は、デンプン濃度が高いほど高くなり、同じデンプン濃度では、片栗粉の方がコーンスターチよりも高くなった。99.5℃における浸漬液の粘度とダイコン中の食塩の拡散係数は指数関係で表わされた。
  • 城畑 麻奈, 鮫島 由香, 松井 徳光
    セッションID: 2A-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】味噌は栄養性に優れた発酵食品であり機能性も注目されている。一方、担子菌を利用した発酵食品の製造が試みられ、発酵能により抗酸化活性等の機能性が付加されることが報告されている。本研究室では、すでに担子菌を用いたきのこ味噌の開発がされている。おからを原料にした味噌など様々な方面から試みられ、研究成果は得られているが詳細は不明な点も多い。そこで本研究では、大豆を原料とし担子菌を用いたきのこ麹で呈味性に優れたきのこ味噌の製造を試みた。また、きのこ味噌における機能性の探究も目的とした。
    【方法】8種の担子菌及びコウジカビの菌糸体を蒸米または蒸麦に植菌し、担子菌を用いて調製したものをきのこ米麹、きのこ麦麹、コウジカビを用いたものを米麹、麦麹とした。調製した各麹に食塩を添加し、塩切麹にした。食塩濃度は大豆、麹、種水の重量に対し5%、10%となるように調製した。各塩切麹と蒸煮・摩砕した大豆を1.5:1の割合で混合し、耐塩性酵母、乳酸菌を添加し、味噌を仕込んだ。発酵・熟成は28℃、30日間で行った。仕込み操作は無菌状態で行った。発酵・熟成期間中、5日ごとにサンプリングし、成分分析に用いた。
    【結果】還元糖量は、食塩濃度5%の米麹味噌は初日から5日間で1.6g/kgから2.6g/kgに増加した。きのこ米麹においては使用した担子菌で違いがあったが、食塩濃度5%のブナシメジのきのこ米麹味噌においては初日から5日間で1.5g/kgから2.0g/kgに増加した。このことから、きのこ米麹においてもアミラーゼ等の酵素が働き、味噌の調製が可能であることが示唆された。今後も呈味性及び機能性に優れた味噌の開発に向け分析を進めていく予定である。また麦味噌についても現在検討中である。
  • 山崎 桃子, 石川 匡子, 高橋 徹, 塚本 研一
    セッションID: 2A-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】 我々は、減塩で損なわれる美味しさや味のバランスを、味の相互作用で補う研究を進めている。昨年度は、食塩水にうま味(グルタミン酸:以下Glu)・甘味アミノ酸(アラニン:以下Ala、グリシン:以下Gly)をはっきりと感じられる濃度で添加したところ、官能評価および味覚センサ測定に有意な味増強効果を認めた1,2。そこで、味増強効果が認められたアミノ酸濃度において、甘味アミノ酸が減塩率に及ぼす影響を検討した。

    【方法】 食塩水(0.584%)にGlu(0.08%)とAla(0.3%)またはGly(0.4%)をそれぞれ添加し、この割合を保ちながら食塩濃度を低下させた水溶液を調製した。これらの溶液とGlu添加食塩水とを二点比較法にて比較し、味強度を評価した。さらに、TDS測定により味の持続時間、味覚センサ測定にて味質を評価した。

    【結果】 Glu添加食塩水との比較により減塩率を算出したところ、Ala・Glu添加食塩水、Gly・Glu添加食塩水のどちらも10%以上の減塩が可能であることが分かった。しかし、減塩率を高くすると、うま味が強く感じられるようになり味のバランスが崩れたことから、うま味と甘味の相互作用を最大にする添加濃度が存在すると推察される。また、AlaとGlyとでは、味覚センサ測定の結果、うま味・苦味等が異なっており、味質の違いも影響を与えていると考えられた。さらにTDS測定にて味の持続時間を評価した結果、Gly添加溶液は味の持続時間が長く、その効果が減塩率の程度に影響していることが分かった。以上の結果から、うま味と甘味の相互作用による味増強に、甘味アミノ酸の味質、味の持続時間が影響を与えることが示唆された。

    1)山崎他:日本調理科学会平成29年度大会要旨集, p65 (2017)

    1)山崎他:日本農芸化学会東北支部第152回大会要旨集, p24 (2017)
  • 竹澤 夏菜, 石川 匡子
    セッションID: 2A-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】我々はこれまで、有機酸との相互作用による塩味の増強が減塩につながることを報告してきた。しかし、高濃度の有機酸添加は味のバランスを崩すため、ラーメンスープのような高塩分食品に対応できない問題があった。そこで本研究では、うま味成分や酸味抑制剤を利用することで、高塩分食品に対しても減塩が可能かどうかを検討した。
    【方法】<酸味およびうま味添加による減塩効果>以下2つの水溶液を調製し、NaClもしくはNaCl+MSGとの二点比較法により味強度を官能評価し、減塩率も算出した。
    ①NaCl +クエン酸:NaCl 1.5%にクエン酸0.0018%~0.075%を添加した。
    ②NaCl+MSG +クエン酸:NaCl 1.5% + MSG 0.5%にクエン酸0.01%~0.035%を添加した。
    <酸味抑制剤の効果>NaCl 1.5% + MSG 0.5% + クエン酸0.03%溶液を酸味基準値10点として、リン酸化オリゴ糖Caを0.1~1%添加した際の酸味強度を点数法にて評価した。
    【結果】食塩水にクエン酸のみを添加した際、いずれの添加濃度でも味の増強が確認できた。0.0025%では酸味は感じられず塩味のみが増強されたが、徐々に酸味が増し、0.025%以上では味全体が強く感じられるものの酸味が不快に感じられた。さらにMSGを添加すると、より強い味増強が確認できた。クエン酸濃度の増加に伴い、うま味と塩味が徐々に弱くなったが、0.022%添加では味強度が塩味:酸味=1:1になり、好ましい味と評価された。この溶液をNaCl+MSGと比較した減塩率は20%であった。リン酸化オリゴ糖Caは、高濃度添加すると苦味・渋味を感じるが、0.5%添加では不快味なく酸味抑制が可能で、減塩率は25%となり、さらなる減塩が可能となった。以上の結果から、酸味抑制剤により高濃度の有機酸添加が可能になり、うま味と併用することで高塩分食品においても味の相互作用を利用した減塩が可能になった。
  • ーアクリルアミド生成抑制効果についてー
    杉浦 文香, 三ッ石 純子, 岡田 公一, 上野 友哉, 松田 秀喜
    セッションID: 2A-8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】高温加熱した食品に広く検出されるアクリルアミド(AA)は、主に還元糖とアスパラギンを120℃以上で加熱することで生じ、長期摂取による発がん性のリスクが懸念されている。我々は前報にて、焼き・揚げ調理を模した乾熱条件モデル試験、ポテトスナックおよびビスケットを試料とした調理試験において、鰹節だしの添加によりAA生成が抑制されることを報告した1)。本研究では、レトルト調理を模した湿熱条件モデル試験により、湿熱条件下のAA生成に、鰹節だしが与える影響を明らかにすることを目的とした。
    【方法】鰹荒節を熱水抽出したものを鰹節だしとして試験に用いた。グルコース、アスパラギンおよび鰹節だしを含む反応溶液を、オートクレーブで121℃、60分間加熱した試料を湿熱条件モデルとし、LC-MSを用いてAAを定量した。コントロールには鰹節だしの代わりに水を添加した試料を用いた。次に、鰹節だしの香気成分と呈味成分に着目し、AA生成抑制への寄与を検討した。鷲野らは、ポーラスポリマー樹脂を用いると、鰹節だしの香気成分と呈味成分が精度よく分離できることを報告している2) 。この手法を参考に、鰹節だしをポーラスポリマー樹脂に供し、香気成分を主に含む吸着画分と呈味成分を主に含む非吸着画分に粗分画した。各画分を添加した湿熱条件モデルを調製し、AAを定量した。
    【結果】湿熱条件モデル試験において、鰹節だしを添加することによりAA生成が抑制された。また、鰹節だしのポーラスポリマー樹脂非吸着画分にAA生成抑制効果が確認された。
    1)日本調理科学会平成29年度大会要旨集 p.48
    2)鷲野由紀, 久保田紀久枝, 小林彰夫(1989), 日本家政学会誌, 40, 265-270
  • 今村 聡美, 三ッ石 純子, 上野 友哉, 松田 秀喜
    セッションID: 2A-9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】鰹節は、日本古来の伝統的な調味料であり、その独特の香気成分や抗酸化作用などの機能性といった様々な研究が行われている。一方、卵を調理する際、アミノ酸由来の硫化水素と鉄が反応することにより硫化鉄を生じ、変色(緑変)することが知られている1)。硫化水素が発生しにくいようにpHを下げるなどの方法で緑変の発生を抑えられるが、風味への影響が大きいという課題がある。我々は、鰹節だしを添加し卵焼きを調理すると、緑変を抑制する効果を見出した。この効果をもたらす作用として鰹節だしと鉄イオンの相互作用が推測されるが、これまでに報告はない。そこで本研究では、鰹節だしの鉄イオンキレート活性を調査することとした。
    【方法】鰹荒節を熱水抽出したものを鰹節だしとして試験サンプルに用いた。鷲野らにより、ポーラスポリマー樹脂を用いると、香気成分と呈味成分が精度よく分離できることが報告されている2) 。キレート活性に寄与する成分を推定するため、同様に試験サンプルをポーラスポリマー樹脂に供し、吸着画分(香気成分)と非吸着画分(呈味成分)に粗分画した。キレート活性はフェロジン法により測定した。すなわち、試験サンプルと鉄イオンを60分間反応させた後にフェロジンを添加した。10分間静置し、フェロジン-鉄錯体の可視部の呈色を測定することで鉄残存率を計算し、鉄イオンキレート活性とした。
    【結果】鰹節だしにおいて、濃度依存的にキレート活性がみられた。さらに、ポーラスポリマー分画物において、主に非吸着画分にキレート活性が確認された。
    1)浅野悠輔, 石原良三(1985),「卵‐その化学と加工技術-」, ㈱光琳, 東京, pp.90
    2)鷲野由紀, 久保田紀久枝, 小林彰夫(1989), 日本家政学会誌, 40, 265-270
  • 来島 壮, 藤原 佳史
    セッションID: 2A-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本の食卓に欠かすことのできないかつお節は、調理の際には粉砕あるいは切削加工したものを使用することが一般的である。切削直後のかつお節の香りは好ましいとされているが、切削前後での香気成分の違いを調べた例は少ない。また、切削直後のかつお節の好ましい香りは、経時的に消失してしまう。そこで、切削直後のかつお節の香気を“削りたて”香と称し、その香気成分を明らかにするとともに、切削前から切削後までの一連の過程におけるかつお節の香りの変化を調べることにした。
    【方法】かつお節を105℃で3分間蒸煮後、切削物を作製した。この切削物を35℃83%RHで2時間、6時間および24時間静置した。切削前、切削直後および切削後静置したかつお節の香りの違いを、香気成分分析と官能評価により調べた。香気成分分析はGC/MSで行った。官能評価は14名のパネルに対して線尺度と7段階評点法で行った。
    【結果】切削前と切削直後の香気成分を比較したところ、複数の成分で違いが確認された。そのうちの2成分は切削直後に大きく増加したが、静置時間の経過に伴い減少した。RIと標準物質によって、この2成分をDimethyl sulfideとPyridineと同定した。一方、Hexanalは切削前と切削直後の変化は比較的小さく、静置中に増加する傾向がみられた。官能評価の結果、静置時間の増加に伴い「削りたて」の評点は低下し、24時間静置した試料では有意な品質差が認められた(p<0.05)。また、経時的に「酸化臭」の評点は増加し、「燻煙臭」「肉質香」の評点は低下する傾向にあった。
  • 田口 拓実, 西川 恵梨子, 伊藤 良栄, 橋本 篤, 亀岡 慎一, 大引 伸昭, 湯川 徳之, 亀岡 孝治
    セッションID: 2A-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】日本料理におけるだし汁を評価する際、料理人はうま味と雑味という言葉を用いる。うま味は基本味であることが発見されて以来、だし汁の品質評価をする際の重要な要素として用いられてきた。一方、雑味には明確な定義は存在せず、雑味の視点からの品質評価はほとんど行われていない。雑味の視点を取り入れることで、だし汁に必要なうま味と不要とされてきた雑味の双方のバランスを考慮した複合的な品質解析が可能となる。そこで本研究では、料理人が雑味を感じる昆布だしの特徴を明らかにすることを目的とした。
    【方法】試料には真昆布と南アルプスの天然水を用い、原料の前処理・抽出温度・時間が異なる5種類の方法{25℃→95℃(10分間)、25℃→100℃(沸騰後30分間)、25℃→95℃(10分間、刻んだ昆布を使用)、60℃(30分間)、3℃(10時間)}でだし汁を作成した。各だし汁に対して、中赤外分光分析による有機物計測、蛍光X線分光分析によるミネラル計測、高速液体クロマトグラフィーによるアミノ酸計測を行った。加えて、雑味の有無については官能検査を用いて確認した。
    【結果】5種類の調理条件のうち、刻んだ昆布を用いて作成しただし汁のみに雑味が確認された。雑味を感じただし汁を他のものと比較すると、うま味成分(グルタミン酸・アスパラギン酸)の含量が少なく、ミネラル(カリウム、塩素)が多い、また中赤外分光スペクトルの糖に由来するピーク値が高い結果となった。よって、雑味を感じるだし汁には「うま味が少なく、ミネラルや糖が相対的に多い」という特徴が確認された。また、雑味はうま味成分量が少なくなることで、他の成分が相対的に際立つことで生じる相対味覚である可能性が示唆された。
  • 御手洗 早也伽, 宮原 葉子, 入来 寛, 三成 由美, 徳井 教孝
    セッションID: 2A-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】幼児の健康障害の一つとして便秘があるが、幼児期の食生活の管理は保護者に委ねられており、母親の影響を大きく受けると報告されている。本研究は幼児の望ましい食生活や生活習慣を形成するために、保護者の食生活習慣・栄養摂取状況と排便習慣との関連について検討したので報告する。
    【方法】調査期間は平成27年12月から平成28年4月、対象者はF県K町の同意が得られた保育所保護者62名。調査内容は1)食生活習慣に関する実態調査2)食事の実態調査(秤量記録法で平日3日間、食前食後の料理を写真撮影した) 3)排便習慣は17項目調査した。4)解析は統計解析ソフトSPSS Statistics ver.22を用い、栄養価はエクセル栄養君Ver.8で算出した。栄養摂取量別3群は食事摂取基準2015年版の基準値±10%を中摂取群、9%以下を低摂取群、11%以上を高摂取群とした。この研究は中村学園大学の倫理委員会から承諾を得ている。
    【結果と考察】栄養摂取状況の18~29歳と30~46歳は基準値に対してそれぞれ、エネルギーは85.6%、83.1%、食物繊維は50.0%、61.1%、カルシウムは52.2%、62.6%、マグネシウムは75.6%、75.9%、鉄は54.3%、58.1%であった。食生活習慣では、料理を作る人は62.0%、野菜料理を日常に取り入れるは85.5%、郷土料理を積極的に取り入れるは16.1%を占めていた。朝食の欠食者は15.1%であり、薄味を好まないが47.8%、あまり咀嚼をしないが22.6%であった。排便習慣では、排便を我慢するが50.0%を占めていた。栄養摂取と排便習慣との関わりで、便の量はバナナ1本以上群とバナナ1本未満群を比較すると、脂質、α-トコフェロール、食物繊維、マグネシウムは低摂取群より中摂取群で便の量が5%レベルで有意に高い値を示した。以上の結果より、保護者の食事や排便についての栄養の教育が必要であることが示唆された。
  • 宮原 葉子, 御手洗 早也伽, 入来 寛, 熊谷 奈々, 三成 由美, 徳井 教孝
    セッションID: 2A-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】幼児の健康障害の一つに便秘があるが、幼児期の食生活の管理は保護者に委ねられており、母親の影響を大きく受けると報告されている。本研究は幼児の望ましい食生活や生活習慣を形成するために、保護者の生活習慣・栄養摂取状況と腸内細菌叢との関連について検討した。
    【方法】調査期間は平成27年12月から平成28年4月、対象者はF県K町の同意が得られた保育所保護者62名。調査内容は1)食生活と食事に関する実態調査(秤量記録法で平日3日間、食品名を食事記録シートに記入および同日の食前食後の料理写真撮影) 2)採便後の腸内細菌叢の分析。分析は㈱テクノスルガ・ラボに依頼し、Nagashima法で行った。解析は統計解析ソフトSPSS Statistics ver.22を用い、有意水準5%未満とした。栄養価はエクセル栄養君Ver.8で算出した。栄養摂取量別3群は食事摂取基準2015年版の基準値±10%を中摂取群、9%以下を低摂取群、11%以上を高摂取群とした。この研究は中村学園大学の倫理委員会から承諾を得ている。
    【結果】年齢別において、腸内細菌叢に有意な差は認められなかった。生活習慣と腸内細菌叢では、朝食時間が7時前とそれ以降・決まっていないでは、推定される菌群のBifidobacteriumの割合はそれぞれ17.0±9.3、10.4±7.0であり、7時前が有意に高い値を示した。栄養摂取状況と腸内細菌叢では、ビタミンK摂取量3群別の低摂取群、中摂取群、高摂取群におけるBifidobacteriumの割合はそれぞれ8.6±6.6、8.8±9.3、14.7±8.0であり、高摂取群が有意に高い数値を示した。
  • 渡邊 順平, 堀江 菜々子, 塩見 朋子, 佐藤 典子, 玉村 公二彦, 杉山 薫
    セッションID: 2A-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】自閉スペクトラム症(以下 ASD と略す)児のなかには、食品・調理された食物に対する嗜好に著しい偏りやこだわり(以下食嗜好と略す)があることが知られている。しかし、現在の食生活における具体的な食品・食物への食嗜好の実態は定かではない。そこで、ASD 児の食嗜好の有無、特徴、加齢に伴う変化を明らかにする目的でアンケート調査を行った。

    【方法】調査は 2017年 10~11 月に奈良県下の養護学校 3 校の小学部に通学する小学校児童(ASD 以外の障がい児も含む)および対照として生駒市公立小学校児童を対象とし、いずれも同児童の保護者に対する無記名アンケートの形式で実施した。回収率は養護学校、通常学校いずれも 42~44%、そのうち有効回答は、それぞれ 39%(ASD児)、100%(健常児) であった。調査は 78 品目の食品に関する食品別嗜好度、食物別嗜好度について、-2 拒否的~+2 固執的 の 5 段階または摂取経験なしで記入させた。

    【結果】ASD 児は健常児に比べ嗜好が全般的に負側にシフトする傾向が強く、特に魚介類、野菜類、果物類で顕著であった。これらの品目のほとんどが健常児では正であるがASD 児では負を示している。例としてマグロ、キュウリ,トウモロコシ,ブドウ,レモンの値が健常児ではそれぞれ 0.93, 0.55, 0.73, 0.95, 0.11 であったのに対し、ASD 児ではそれぞれ -0.83, -0.44, -0.07,-0.12,-0.83であった。食物の嗜好性においても、ASD 児は刺身、サラダに大きな負の嗜好性を示していることからも、生食を忌避する傾向が示された。尚、食品における学年別分析からは、ASD 児の加齢に伴う嗜好変化は窺えなかった。一方、食品の摂取経験は加齢に伴い増加する傾向が見られた。
  • 小泉 昌子, 峯木 眞知子
    セッションID: 2B-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】鶏卵の品質は、鶏に与える飼料や鶏種、週齢、鶏を取り巻く環境の4因子に影響される。これまでに行われた卵の調理特性に関する研究は、飼料や鶏種の違いによる報告が多く、鶏の週齢の違いによる報告は少ない。著者は既に、週齢の異なる白色レグホーン種鶏の産んだ卵の調理特性について、報告した1)。そこで本研究では、近年市販卵の差別化のためにシェアが増えている、赤玉卵鶏であるボリスブラウン鶏の週齢の違いが卵の調理特性に与える影響について、検討した。

    【方法】ボリスブラウン鶏が30~70週齢までに産卵した卵を、試料として用いた。その調理特性を明らかにするため、卵の基礎データとして、一般成分や卵質、部位別重量割合、調理特性として、卵白泡の安定性および起泡力、スポンジケーキの体積およびテクスチャー、生卵および加熱卵の物理的特性、プディングのテクスチャーについて検討した。

    【結果】一般成分は鶏の週齢の増加により、卵白および卵黄の水分量・卵白のタンパク質量が増加し、卵黄の脂質量が低下した。卵質は鶏の週齢の増加により、卵殻強度・HU(ハウ・ユニット)・卵殻重量割合が低下し、全卵重量・卵黄重量割合が増加した。調理特性は、卵白の離水率が増加し、スポンジケーキのかたさ・プディングのかたさが低下したが、加熱卵のかたさ・卵白の起泡力に違いはなかった。以上の結果から、ボリスブラウン鶏における週齢の違いは、卵の調理特性に影響を与えるため、赤玉卵を調理する場合には、鶏の週齢の違いを考慮して調理に用いる必要があることが明らかとなった。

    1) 小泉昌子, 重村泰毅, 峯木眞知子. 鶏の週齢の違いが卵の調理特性に与える影響 -白色レグホーン種鶏-. 一般社団法人日本家政学会第70回大会
  • 土岐田 佳子, 中島 真実, 仁平 葉子, 藤井 恵子
    セッションID: 2B-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】鶏胸肉は肉類の中では安価ではあるが、調理法によってはパサつき、硬化しやすいという難点がある。そこで、高齢者でも食べやすい鶏肉製品の開発を目的とし、鶏胸肉を用いて、酵素処理を併用した真空調理について検討した。
    【方法】原材料として鶏胸肉、粗酵素液としてキウイ及びマイタケ希釈液、液体塩麹を用いた。鶏肉をそれぞれの粗酵素液と共に真空包装し、中心温度75℃で5分間一次加熱し、急速冷却後、二次加熱を行った。加熱後の試料について、重量変化、力学特性、分子量分布、遊離アミノ酸量の測定と、組織構造の観察を行った。
    【結果】加熱直後の重量変化は、キウイ試料はマイタケ試料および塩麹試料に比べ有意に減少した。硬さは、穴あけ処理によりキウイ試料およびマイタケ試料が顕著に軟らかくなり、ユニバーサルデザインフードの区分1を下回った。電気泳動による分子量分布の結果から、生肉の30~60kDのバンドが酵素処理を行うことで低分子化され、特にマイタケ試料において低分子化が進んだ様子が観察された。遊離アミノ酸量は、穴あけ処理によってキウイ試料およびマイタケ試料が増加し、特にうま味を呈するアスパラギン酸とグルタミン酸および苦みを呈するメチオニン、バリン、ロイシン、イソロイシンなどが増加した。組織構造は、穴あけ処理を行ったキウイ試料とマイタケ試料はコントロールと比較して、筋繊維が部分的に崩れている様子が観察されたが、塩麹試料では大きな変化は見られなかった。キウイ、マイタケ由来の酵素と鶏肉の穴あけ処理を併用して真空調理をすることで、ユニバーサルデザインフード区分1の規格に適合する鶏肉製品の調製が可能となることが示された。
  • 美味しさと安全性の両立を目指して
    秋元 真一郎, 迫井 千晶, 五領田 小百合, 山田 研
    セッションID: 2B-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】

    増え続ける野生鳥獣による農林業への被害を軽減するため、厚生労働省は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を作成し、捕獲獣肉(ジビエ肉)の食品としての利活用を促進している。ガイドラインでは、ジビエ肉を中心温度75℃1分間以上またはこれと同等以上加熱するよう推奨しているが、「同等」とされる温度と時間は提示されておらず、ジビエ肉を美味しく調理するという点においては、まだ多くの課題が残されている。

    そこで本研究では、ジビエ肉の美味しさを損なわず、一般飲食店でも実現可能な調理法の開発を目指し、素材へのストレスを小さくするように比較的低温でゆっくりと加熱しながら、ガイドラインの加熱条件と同等以上の「同等」とされる温度と時間の組み合わせについて検討することを目的とした。

    【方法】

    長野県で紹介されている比較的低温でのジビエの加熱条件「63℃で30分間」も参考にし、フライパンを用いた加熱法(『アロゼ・ルポゼ』弱火にかけた鍋の中で低温のバターを肉に回し掛けて火入れをし、火入れ完了後に保温することによる温度上昇を用い、肉の中心部をロゼに仕上げる)によるジビエ肉(鹿肉)の加熱実験を行い、加熱前~加熱完了にかけて、データロガーにて正確な時間および中心温度を記録した。

    【結果】
    同一条件による計30回の実験から、「中心温度63℃30分間と同等の加熱温度と時間」を十分満たす結果が8サンプル得られた。直接の火入れで高温になるまで加熱せずとも、火入れ完了後も保温による中心温度の上昇が十分確認できる調理法であった。この結果を厚生労働省に提出し、「ガイドラインの加熱条件と同等以上」の「同等」とされる温度と時間の組み合わせを入手した。
  • 稲垣 桜子, 山本 千晶, 柴田 昌利, 村野 正記, 佐野 文美, 市川 陽子
    セッションID: 2B-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】近年、日本のニホンジカの生息数が増加傾向にあり、静岡県伊豆地域では、シカによる農林産物への被害総額が1.6億円を超えている(H27年度)。被害の軽減を目指した管理捕獲では、狩猟者の減少や高齢化に伴い、少人数でも捕獲可能な「くくり罠」による捕獲頭数が増加している。しかし、捕獲個体を処理、精肉加工する野生鳥獣専用食肉加工施設の受入れ頭数にも限界があり、熟成期間を見直す必要がある。また、「くくり罠」で捕獲されたシカ肉は高pHになりやすく、肉のpHは食肉特性に大きく影響する。そこで、シカ肉の食資源化に向けた肉質の標準化、熟成日数の短縮を目的に、捕獲した個体のpHの発生頻度と食肉特性を調べた。
    【方法】くくり罠捕獲されたメスジカ16頭の背ロース肉を試料とし、搬入時~熟成終了までのpHの変化、体重、体温を測定した。また、保水性の指標としてドリップロス(DL)、クッキングロス(CL)、遠心保水性、軟らかさの指標としてかたさ応力、凝集性、剪断力価、およびブルーミング前後のロースト試料の色彩(L*値、a*値、b*値)を測定した。これらの14項目と、熟成前後のpHとの相関を確認した。
    【結果】熟成中のpHの変動に規則性はないが、熟成4~5日目のpHが7.5付近で、個体のばらつきが最小となった(それぞれCV=1.9%, 2.0%)。熟成前pHとCL、DLに凹曲線、熟成前および熟成後のpHと遠心保水性に凸曲線状の関係がみられた。一方で、熟成前および熟成後のpHの上昇とともに、かたさ応力および剪断力価が低下し、熟成後pHの上昇とともにL*値、a*値、b*値が上昇した。体温および凝集性については、pHとの関連はみられなかった。
  • 辰巳 桃子, 鮫島 由香, 松井 徳光
    セッションID: 2B-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】 近年、米麹に水を加えて調製した甘酒または塩麹中の酵素の分解力を利用し、肉などをより美味しくする調理法が普及し始めている。しかし、発酵させることで起こる食材の変化に関しては科学的に明らかにされていない。また、米麹甘酒の塩分濃度によるプロテアーゼ活性の違い、甘酒に使用する米麹の保存状態や保存期間による酵素活性の変化についても明らかにされていない。そこで、本研究では甘酒により発酵させた肉の成分変化および甘酒に使用する米麹のプロテアーゼ活性の違いを調べることを目的とした。
    【方法】 合挽き肉(牛肉:豚肉=6:4)に甘酒または塩麹を混合し、5℃で2日間発酵させたものの遊離アミノ酸量をHPLC、コレステロール量をコレステロール測定キットで測定した。また、甘酒および塩麹のアミラーゼ活性をソモギーネルソン法、プロテアーゼ活性をローリー法で測定した。甘酒の塩分濃度は0~20%の範囲で設定し、甘酒調製の前と後に塩をそれぞれ加えたものについてプロテアーゼ活性を測定した。米麹の保存状態、保存期間によるプロテアーゼ活性の変化は、冷蔵(5℃)または冷凍(-20℃)で保存した米麹を定期的にサンプリングして測定した。
    【結果】 甘酒および塩麹で発酵させることで甘味、うま味を示す遊離アミノ酸が増加し、塩麹で発酵させた方がより増加した。コレステロール量は発酵させることで減少した。アミラーゼ、プロテアーゼ活性は甘酒より塩麹の方が高かった。甘酒のプロテアーゼ活性は塩を加えることで高くなり、調製前に塩を加えた甘酒は塩分濃度12%以降急激に活性が増加した。米麹のプロテアーゼ活性は保存期間の経過とともに増加した。また保存状態による活性の大きな違いはなかった。
  • 柏原 宏行, 戸所 健彦, 福田 克治, 堤 浩子, 秦 洋二
    セッションID: 2B-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】麹菌Aspergillus oryzaeが生産する環状ペプチド,デフェリフェリクリシン(Dfcy)は清酒の着色原因物質として知られている.Dfcyは高い水溶性を示し無色であるが,溶液中の鉄をキレートすることで着色物質へと変化する.我々はこのDfcyの高い鉄キレート能に着目し,Dfcyが油脂の酸化防止や生体内での脂質酸化抑制,無機鉄の吸収促進など様々な機能性を有することを明らかにしてきた.また,我々は過去の検討で,Dfcyを高含有する米麹の製造方法の確立と,Dfcy高含有米麹を用いたDfcy高含有清酒の製造に成功した.今回,Dfcy高含有清酒の畜肉調理時の不快臭抑制効果を見いだしたので報告する.

    【方法】エタノールにDfcy濃度が0-1000 mg/Lとなるように麹菌が生産したDfcy精製品を添加したモデル料理酒を作製した.各Dfcy濃度のモデル料理酒を豚ミンチに対して,重量比15%となるよう混ぜ込んだ後,105℃,15分加熱した.各加工サンプルの生臭さ評価を官能試験(5段階評価)で行った.次に,加熱したサンプルの臭い成分をGC-MSにて定量を行った.

    【結果】官能検査の結果より,Dfcy濃度依存的に生臭さが抑制されている傾向が認められた. GC/MS定量結果より,Dfcy添加濃度に依存して畜肉の不快臭であるヘキサナール,2, 3-オクタンジオンの抑制率が上がる傾向が認められた.また,官能評価の点数とヘキサナール抑制率には正の相関が確認できた.このように,麹菌が生産するDfcyを高含有する清酒を畜肉の調理に用いることで,ヘキサナールなどの不快臭抑制効果が期待できる.
  • 篠原 亜里紗, 河野 俊夫, 張 夏
    セッションID: 2B-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】野菜や果物、魚介類といった生鮮食材の運搬には発泡スチロールが用いられている。発泡スチロールはほとんどが単一素材であるため分別が容易で、使用後は溶剤や熱、圧縮によって体積を減らし、プラスチック製品や燃料などに再利用される。しかし、魚介類の運搬に用いた発泡スチロールにはきわめて強い臭気が付着しているため、再利用するには残存している臭気を完全に除去する必要がある。そこで本研究では、使用済み発泡スチロールに付着した臭気の除去を目指し、多数存在する臭気の中から、再生利用の障害となる臭気成分の同定をSPME法および人の官能による評価を組み合わせて行った。
    【方法】測定には魚臭付き発泡スチロール9種類(アジ、タイ、養殖ブリ、天然ブリ、タラ、ニシン、ヤリイカ、黒カレイ、宗八カレイ)と未使用の発泡スチロールの計10種類を用い、臭気捕集は固相マイクロ抽出(SPME)法により行った。細断した発泡スチロール10 gをポリエチレン製袋に入れ、密封した後、55℃に設定した恒温槽中で60分間SPMEファイバー(65μm PDMS/DVB)を露出させ、香気成分を捕集した。その後、GC-MS分析に供した。さらに、同様の方法で臭気捕集を行い、GC-Olfactory(スニッフィング)によって問題となる臭気の保持時間を確認して、GC-MSによる結果と合わせ、臭気成分の同定を試みた。
    【結果】スニッファーによる分析では、いずれの試料でも魚の臭いを感知できた。しかし、SPME法による臭い吸着量は微量であるため、官能評価者によっては臭気を十分に確認できない場合もあった。そのため、溶媒抽出法によって臭気成分を捕集する手法を試みている。
  • 福田 翼, 江上 渚, 中本 圭祐, 南 祥寛, 辰野 竜平, 古下 学
    セッションID: 2B-8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】燻製は、木材チップなどを燃焼させた際に発生する燻煙を食品に当て、乾燥させながら燻煙成分を付着させ、貯蔵性と独特の燻香を付与させる加工法である。近年、乾燥と燻煙を別工程で行う電子スモーク法が開発された。本手法により、数十分程度の短時間かつ常温での冷燻が可能となった。しかしながら、本製造法における知見は乏しく、燻煙時間が水産物の品質に及ぼす影響は明らかではない。そこで、シロサバフグを対象に電子スモーク法による燻製品の製造を試み、燻煙時間の影響を調査した。

    【方法】シロサバフグは、解凍品を用いた。解凍したシロサバフグは、調味液に一昼夜漬け込み、乾燥装置にて乾燥(20℃・90 min)を行った。乾燥したシロサバフグは、電子スモーク法を用いて燻煙処理を行った。燻煙時間は、0 min、10 min、20 min、30 min、および60 minとした。

    【結果】燻煙時間は、一般生菌数、水分含有量、pH、塩分、タンパク質量および色差への影響は確認されなかった。一方、遊離アミノ酸量は、燻煙時間0-30 minにおいては時間経過と供に減少した。しかし、燻煙時間60 minの遊離アミノ酸量は、燻煙時間30 minよりも増大した。テクスチャー評価は、燻煙時間による影響が見られ、燻煙時間60 minが最も硬かった。味評価では、旨味・苦味・渋みに差はなかったが、燻製時間0 minおよび60 minの旨味コクは燻製時間10 min、20 minおよび30 minよりも強くなった。におい評価では揮発性揮発成分のピークが確認され、燻製時間0 minが37種、燻製時間10 minが37種、燻製時間20 minが41種、燻製時間30 minが41種、燻製時間60 minが41種あった。官能評価(n=8)を行った結果、燻製時間が増加していくごとに嗜好性が向上し、総合評価として燻製時間60 minが最も高い評価を得た。
  • 湯浅 正洋, 川邊田 晃司, 江口 恵加, 安部 春香, 山下 絵美, 古場 一哲, 冨永 美穂子
    セッションID: 2B-9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【背景】牡蠣は軟体動物斧足類に属する貝であり, わが国においては, 冬が旬の真牡蠣(Crassostrea gigas)と 夏が旬の岩牡蠣(C. nippona)が知られている. 我々は, これまでに, 日本産の岩牡蠣と真牡蠣の呈味を味認識装置により明らかにしているが, 岩牡蠣の方が真牡蠣よりも旨味や塩味が高く濃厚な味わいである可能性を見出している. 一方, 一般的に岩牡蠣は大ぶりで旨味が強く濃厚な味わいであるとされるが, その科学的根拠は乏しい. そこで, 本研究では, 岩牡蠣の呈味を評価するために, その呈味特性および呈味成分(核酸, 有機酸, 遊離アミノ酸, 脂肪酸組成および塩分濃度)を明らかにした. なお, 比較対照には真牡蠣を用いた.
    【方法】全ての牡蠣は日本産とし, 岩牡蠣は2015年7-8月に9産地分(計27個), 真牡蠣は2015年12月に11産地分(計33個)をそれぞれ収集した. 呈味特性(味覚応答)は味認識装置により先味(苦味雑味,旨味および塩味)と後味(苦味および旨味コク)を明らかにした. 呈味成分としては, 5’-イノシン酸, コハク酸および遊離アミノ酸をHPLC法で, 脂肪酸組成をGC-MS法で,塩分濃度を簡易塩分計でそれぞれ測定した. 岩牡蠣と真牡蠣のそれぞれの項目を比較し, 岩牡蠣の特徴を評価した.
    【結果・考察】岩牡蠣において, すべての先味が真牡蠣よりも有意に高値を示した(P<0.05). 5’-イノシン酸およびコハク酸には差は認められなかったが, 遊離アミノ酸のうち特に苦味を呈するアミノ酸類において, 岩牡蠣で有意に高値を示した(P<0.05). 脂肪酸組成については, 岩牡蠣におけるパルミチン酸およびステアリン酸が有意に高値を示した(P<0.05). 一方で, 塩分濃度は岩牡蠣の方が低値を示した(P<0.05)が, 真牡蠣との差は1.1倍程度と大きな差ではなかった. 以上より, 岩牡蠣は真牡蠣と比べて濃い呈味であり, この理由としてはアミノ酸や脂肪酸の組成が異なることが影響していることが示唆された.
  • 山本 淳子, 森山 三千江
    セッションID: 2B-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】日本近海の砂地に生息する貝であるツメタガイは、アサリの繁殖時期と同じで、潮干狩りの際に見かけるがアサリの天敵である。アサリは愛知の地産であるが年々漁獲量が減っており、その原因の一つとされている。ツメタガイは、独特の粘りと臭い、硬い肉質が嫌厭される。そこで、ツメタガイの調理法を開発し、嗜好性が高く多く食べるようになれば、アサリの漁獲量増加の貢献となる。本研究では、ツメタガイの利用を進める基礎データを得ることを目的とし、加熱方法の検討を行った。
    【方法】ツメタガイは、愛知県水産試験場(蒲郡)の提供品を用いた。加熱方法は、水・酒・茶を用いてゆでる・蒸す・圧力鍋・レンジ・真空調理の5つを比較検討した。測定項目の、破断応力・テクスチャー測定は、クリープメーター(山電)を、組織構造観察は、走査電子顕微鏡(日立S-4200 SEM)を、色調は、色差計(日本電色)を用いた。官能評価は、評価項目「色」、「香り」、「食感」、「味」、「総合」について嗜好型官能検査を5点評点法で行った。
    【結果】加熱方法により、食感は大きく異なった。破断応力は、真空調理加熱の硬さが低く、柔らかくなることが分かった。電子顕微鏡観察では、真空調理の組織構造のみ、他の変化と異なり、組織の破壊における亀裂がなく平滑であった。色調は、水では色が暗く、茶ではあくが付き、明度が下がったが、酒を用いると明度が最も高いものとなった。官能評価において、水でゆでたものが硬く、においも強く好まれないものとなった。評価の高かった加熱方法は、レンジ加熱と真空調理であり、茶・酒を用いることで嗜好性は上がった。特に酒は、見た目、硬さにおいて嗜好評価が高かった。以上のことから、酒を用いてレンジ加熱、真空調理が適していた。
  • 山田 徳広, 苔庵 泰志, 津村 和伸
    セッションID: 2B-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】ショウガ(Zingiber offinale)抽出物を用いた豆乳ゲルの作成条件を検討することを目的とした。
    【方法】これまでに幾種類かの豆乳を用いて豆乳ゲルを作成したが、豆乳の種類によってゲルの形成具合が大きく異なってい た。そこで最も良好なゲルを形成した篠崎屋(株)より購入した無調整濃厚豆乳を用いてゲルの作成条件を検討した。ショウガ汁を遠心分離した後ろ過し、L-アスコルビン酸とL-システインをそれぞれ0.2%と10mMになる様に添加した後に凍結乾燥粉末にしたものをショウガ抽出物(GE)とした。GEは、0.2%L-アスコルビン酸,10mM L-システイン水溶液に溶解して用いた。1%カゼイン溶液(pH7.0)500μLにGE溶解液10μLを添加し、60℃30分反応させた後に4.0Mのトリクロロ酢酸500μLを添加して室温で30分放置し、遠心分離して得られた上清の280 nm,光路10mmにおける吸光度上昇度が1となる濃度を1unitとし、直径48mmの円形容器に豆乳50gを入れ、GE溶液1mLを添加し、ゲルの硬さを評価指標とした。
    【結果】ショウガプロテアーゼの至適温度である60℃,60分の条件では、3unitまではGE濃度が高くなると共にゲル強度が増したが、10unitではゲル強度は低下した。GE濃度3unit,60分の場合、70℃で最も硬いゲルが形成された。GE濃度3unit,60℃の場合、30分までに急速にゲル強度が増し、120分までは緩やかなゲル強度の増加が認められたが、120分と12時間との間に差は認められなかった。GE濃度3unit,60℃,60分の条件で豆乳を10%希釈した場合、ゲル強度は約15%低下した。
  • 郡山 貴子, 佐藤 瑶子, 飯島 久美子, 香西 みどり
    セッションID: 2B-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
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    【目的】一般に,乾燥豆は組織が硬く煮熟に時間がかかるため,予め浸漬させてから加熱する。高温高湿下で貯蔵した豆は硬化により加熱中の軟化が抑制されることが報告されているが,浸漬操作そのものが軟化の速度定数や加熱時間に及ぼす影響を検討した報告はない。本研究では「貯蔵」および「浸漬操作」が乾燥豆の加熱時間に及ぼす影響について定量的に評価することを目的とした。

    【方法】試料として大豆,金時豆,小豆,黒豆,手亡,とら豆,ひよこ豆,および八升豆を用いた。貯蔵条件は4℃/80% RH,37℃/75% RH,貯蔵期間は0~90日とした。加熱条件は生豆の状態から10~99.5℃の各温度で0~16hとし,対照として予備浸漬(20℃ 8h)後の豆を50~99.5℃で0~3h加熱した。硬さはテクスチャアナライザーを用いて測定した。各試料の硬さを軟化率としたときの一次反応プロットの傾きから,軟化の速度定数(以下,ks)を求め,これを用いて加熱中の硬さの変化を算出し,加熱時間を求めた。

    【結果】大豆,金時豆について予備浸漬なしの10~50℃における硬さの変化より“吸水による軟化”,60~99.5℃における硬さの変化より“吸水と加熱による軟化”の速度定数を得た。4℃/80%冷蔵では予備浸漬ありの99.5℃のksは予備浸漬なしに対し大豆は2.4倍,金時豆は2.3倍大きく,浸漬の効果が示された。これに対して高温高湿で120日間貯蔵した豆では予備浸漬ありの99.5℃のksは予備浸漬なしに比べ大豆は0.8倍,金時豆は1.2倍となり,浸漬の効果が小さくなった。大豆,金時豆以外の豆でも貯蔵後は予備浸漬ありとなしのksの差がほとんどなくなったことから,貯蔵豆では浸漬操作を行うと硬化がより明瞭になり,軟化の速度定数の低下に伴い加熱時間が長くなることが明らかとなった。
  • 小川 歩実, 中野 優子, 香西 みどり
    セッションID: 2B-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】演者らはこれまで野菜を含む品質一定で加熱調理可能な再構成食材として、ニンジンのピューレを耐熱性ゲル化剤である脱アシル型ジェランガム及び乳酸カルシウムで成型した“野菜ゲル”を調製し、その特性を報告した1)。本研究では、種々の野菜ピューレ添加によるジェランガムゲルの冷凍耐性付与の効果を明らかにすることを目的とし、野菜の種類やピューレの粒子サイズの影響を検討した。
    【方法】ゲル化剤としてジェランガム1%、乳酸カルシウム0.6%を用い、ニンジン・ゴボウ・ダイコン・ジャガイモ・カボチャ・レンコンピューレを用いて野菜ゲルを調製した。野菜ゲルは1.5cm角に成型し実験に使用した。冷凍耐性は-20℃で24時間冷凍した後常温解凍し、離漿測定とかたさ測定(テクスチャーアナライザー)を行った。また、冷凍したゲルをRO水、1%NaCl溶液中で30分沸騰加熱し、かたさと重量変化を測定した。冷凍耐性に及ぼす粒子サイズの影響を調べるために、粉砕条件の異なるニンジンピューレで野菜ゲルを調製し、かたさと加熱後の重量変化を測定した。
    【結果】最適なピューレ濃度は野菜の種類によって異なり、50~88%と幅がみられた。野菜の水分が少なく、炭水化物が多いほどピューレ濃度は低い傾向であった。凍結解凍後、ジェランガムのみのゲルは激しく離水しゲルの凝集が起こったが、野菜ゲルはすべて離水がほとんど見られず、加熱耐性を保持していた。ニンジンピューレの粉砕条件を変え粒子サイズの影響を検討した結果、200-350μmの範囲では加熱・冷凍耐性はほとんど変わらなかった。以上より、野菜ゲルの配合は野菜の種類により異なるが、いずれも加熱耐性に加えて冷凍耐性があることが分かった。
    1)小川歩実他,日本調理科学会平成27年度大会要旨集,P57
  • 伊藤 聖子, 中村 有紗, 新井 映子
    セッションID: 2C-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アピオスは,北アメリカ原産のマメ科ツル性植物であり,根茎にのびた節部が肥大し,数珠状に連なった塊茎が食されている。アピオスの主成分は澱粉で,調理後の食感はジャガイモに類似しているが,マメ科特有のイソフラボンやオリゴ糖の供給源として注目されている。澱粉を豊富に含むアピオスは米粉と容易に置換でき,米粉蒸しパンに置換した場合,保存によるクラムの硬化が抑制されることが明らかとなった。  
     そこで本研究では,異なる乾燥法でアピオス粉末を調製し,保存による硬化が著しいグルテンフリー米粉パンの製パン性に与える各アピオス粉末置換の影響を検討した。

    【方法】アピオスは,生試料を凍結乾燥(FD)または熱風乾燥(HD),蒸し加熱後に熱風乾燥(SHD)して乾燥試料を調製,ロータースピードミルを用いて粉砕したものを各アピオス粉末とした。各粉末は,DSCとRVAおよびグルコアミラーゼ法による糊化特性を比較した。グルテンフリー米粉パンは,米粉の5,10および20%を各アピオス粉末で置換して調製後,比容積を測定した。また,20℃で1日および2日間保存した後にテクスチャーを測定,2日間保存したパンを試料として官能評価を行った。

    【結果】FD置換パンは,5%置換で比容積がControl(無置換)より有意に大きくなったが,置換率が増加するとクラムに空洞が生じ,比容積は小さくクラムが硬くなる傾向が示された。HD置換パンは,5%および10%置換でControlより比容積が有意に大きく,2日間保存後もControlよりやわらかくなることが示された。SHDは糊化度が高く、SHD置換パンはいずれも膨化性が乏しくなり,クラムはControlより有意に硬くなった。
  • 森田 亜紀, 藤本 章人, 香西 みどり
    セッションID: 2C-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ナチュラルチーズは原料乳や微生物の種類、熟成条件の違いなどにより世界に1000種類以上ありそのテクスチャーや風味は多岐に渡っている。チーズを原料とするチーズブレッドやチーズロールにおいて、使用するチーズの種類によってパンの風味は異なるが、パンのチーズ風味を網羅的に研究した例はない。本研究ではナチュラルチーズを添加したパンの評価用語および評価方法を設定し、各試料の官能特性を明らかにすることを目的とした。

    【方法】ナチュラルチーズ13種類を小麦粉に対して10%配合したワンローフ型の食パンを作成した。パンに関してクラストの色調、比容積を測定した。10人のパネリストによりチーズパンの風味に関する用語を収集し、評価用語として適した用語を選抜し定義づけを行った。これら用語に関してQDA法による官能評価を実施し解析した。

    【結果】チーズの添加によりクラストのL値の減少、比容積の減少が認められた。チーズパンの風味用語として52語のリストを作成した。パネリスト全員による討議の結果、評価用語として香り9用語、味5用語を決定した。QDA法による評価結果を主成分分析したところ、第1軸(寄与率39.9%)は「チーズの焼成香と呈味」、第2軸(寄与率11.4%)は「パンの焼成香と乳の香り」と解釈できた。試料の主成分得点と評価用語の因子負荷量を用いて散布図を作成し、因子負荷量によるクラスター分析の結果と合わせて分類した。チーズパンは主にチーズの微生物の種類や熟成期間の違いによってグループ分け可能であった。また、L値と「スモークの匂い」「チーズを焼いたような香り」の強さは負の相関が認められ、チーズ成分によるメイラード反応が風味に影響を与えていると考えられた。
  • スロージューサー残渣添加の影響
    原 康香, 武智 多与理, 畠中 芳郎, 萬成 誉世, 高村 仁知
    セッションID: 2C-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    目的】米粉パンの膨化には、生地の粘度およびその保持が重要である。そのため、グルテンフリー米粉パンには、増粘多糖類など、グルテンに代わる物質の添加が必要となる。一方、スロージューサーで製造したジュースの残渣には、増粘多糖類であるペクチンなど、様々な機能成分が含まれている。本研究では、スロージュース製造残渣を添加したグルテンフリー米粉パンを調製し、製パン性向上効果を明らかにすることを目的とした。

    【方法】まず、スロージューサー残渣について、粒度測定および構成成分の定量を行った。次にスロージューサー残渣粉末を添加したパンを調製し、生地の評価(膨化度)および製パン特性評価(比容積測定、断面評価、テクスチャー測定、官能評価)を行った。パン生地の評価および製パン特性評価の評価結果から、ジューサー残渣粉末の最適添加量について検討した。

    【結果】スロージューサー残渣の粒度は、米粉パンの膨化を阻害する程度のものではないこと、スロージューサー残渣にはペクチンなど多くの食物繊維が含まれていることが明らかになった。また、スロージューサー残渣3~6gを添加した米粉パンは未添加の米粉パンと比べ、生地の評価および製パン特性評価において優れた値を示し、きめが細かく、柔らかい良いパンが焼成できた。さらに、パン焼成後3日目までテクスチャー測定を行ったところ、スロージューサー残渣添加による老化抑制効果が確認できた。これらの結果から、スロージューサー残渣の添加は、グルテンフリー米粉パンの製パン性を向上する効果があることが示唆された。
  • 鷲塚 晋, 奥田 玲子, 佐藤 幸治, 白杉(片岡) 直子
    セッションID: 2C-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】大麦は「食後血糖値上昇抑制作用」「腸内環境の改善」などの生理機能を持つ水溶性食物繊維β-glucanに富むことから、パンなどの様々な食品に応用されている。しかし、パンの場合、大麦粉の配合割合が高くなるにつれて、製パン性が低下する。奥田らは、食味の優れた高β-glucan大麦20%含有食パンを調製したが、製パン技術が必要であること、生理活性発現の観点からは、大麦粉の配合割合を高める必要があることなどが課題であった。本研究では、ホームベーカリーを用いて日常食として利用できる高β-glucan大麦40%含有食パンの調製を試みた。
    【方法】試料粉は、カナダ産小麦粉 1CW(アヴァロン:日本製粉)と国産大麦60%搗精粉(高β-グルカン大麦品種ビューファイバー[高粒度タイプ]:豊橋糧食工業)を用い、奥田らの大麦パンの配合を参考に改変した。試料の調製は、ホームベーカリー(SD-MDX100, Panasonic)で行った。加水量は100%(BP: ベーカーズパーセント)とし、グルテン(A-グルG:グリコ栄養食品(株))を添加した。混捏と発酵の各合計時間は約49分と約110分であった。官能評価には評点法と順位法を用いた。体積は菜種置換法により測定した。
    【結果】官能評価から、大麦食パンの砂糖の添加量は7.5%(BP)とした。大麦食パンの比容積 (cm3/g)は、2.59±0.03であった。大麦食パンと市販小麦食パンとの官能評価による比較では、嗜好性を問う総合評価に有意差はなく、60%のパネルが本研究で調製した大麦食パンを「日常的に食べられる」と回答した。これらの結果から、本研究で調製した大麦食パンは日常食として利用可能であると考えられた。今後、ヒトを対象とし、本研究で調製した大麦食パンの生理活性について検討する予定である。
    奥田玲子他(2016), 日調科平成28年度大会
  • 西原 百合枝, 池口 舞, 田﨑 奈緒子, 藤本 彩花, 朝倉 富子, 舟木 淳子
    セッションID: 2C-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高齢化率が上昇している日本では、加齢に伴う咀嚼・嚥下機能の低下が問題となっている。われわれは必要性が高まっている嚥下困難者用食品としてのパン粥に着目し研究を行ってきた。本研究では、プロテアーゼを利用してパン粥を懸濁状にすることにより、容易にパン粥を作製することを試みた。
    【方法】プロテアーゼはパパイン(精製パパイン、三菱ケミカルフーズ株式会社)を使用した。パンはホームベーカリー(SD-BMT2000、パナソニック株式会社)を用いて作製し、パンのクラムに0.001%、0.005%、0.01%パパイン溶液を加え60℃で60分間湯煎をした後4分間加熱し、パパイン添加パン粥を作製した。パパインを添加せず、同様の方法で作製したものを対照パン粥とした。パン粥のテクスチャーについてはクリープメータ(株式会社山電)によるテクスチャー解析を行い、パン粥のタンパク質分解をSDS-PAGEにより観察した。
    【結果】対照パン粥は非常に不均一な状態であり粥状になっていなかったが、パパイン添加パン粥は粥状になった。パパイン添加パン粥のテクスチャー解析を行ったところ、45±2℃における硬さは0.001%パパイン添加パン粥4.35±1.06 kPa、0.005%パパイン添加パン粥2.37±0.48 kPa、0.01%パパイン添加パン粥2.05±0.46 kPaであり、これら硬さと付着性、凝集性の値は消費者庁のえん下困難者用食品たる表示の許可基準の範囲内であった。これは20±2℃で測定した場合も同様であった。またSDS-PAGEにおいてパパイン添加パン粥はタンパク質の分解がみられたが、これはパン中のグルテンがプロテアーゼにより分解されたためであると考えられた。
    本研究の一部は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」によって実施された。
  • 堀井 貴子, 栗﨑 純一, 宮脇 長人
    セッションID: 2C-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】

    食物繊維は健康維持に重要な役割を果たすとされているが,現状,十分に摂取されていない。一方,豆腐生産の副産物であるおからは,食物繊維が豊富に含まれており,積極的に活用することが望まれている。本研究では,おから添加麺の開発にあたり,喫食者の食物繊維摂取量や嗜好性に合わせたり,製麺時の作業性を向上させることを目的として,おからの配合割合,加水量と,麺生地特性との関連性を検討した。

    【方法】

    おからの配合割合は,中力粉に対して0,2.5,5,7.5,10,12.5%とした.麺生地は,ニーダー(KNEADER製)で20分混捏,30分ねかせ供試した.おから添加量,加水量が麺生地の硬さ,付着性に及ぼす影響は,それぞれ適切な治具を装備したクリープメーター(山電製)で測定し,解析した.おから配合割合が捏ね時の粘弾性に及ぼす影響はファリノグラフ(ブラベンダー製)で解析した.そのときの加水量は,500 BU近辺となるよう調節した.

    【結果】

    おから添加麺に適切な製麺性を与える加水量範囲は,どの配合割合でも極めて限定的であったが,おから添加割合が低い方が加水量範囲は狭く,増えるに従い広くなった.加水量の増加は生地を軟化させるが,同じ加水量で製麺した場合には,おから添加量の増加に伴って生地の硬さは増加する傾向にあった.一方,麺生地の付着性はおから添加に伴い,低下する傾向がみられた.ファリノグラフ測定の結果,5%を超えるおから添加では時間と共にBU値が単調増加した.以上,適切な麺生地特性を得るためのおから添加量と加水量との関連性の一端を明らかにすることができた.今後,得られた生地の組織学的特徴の解析や伸展性等も検討する予定である。
  • 仲西 由美子, 入江 謙太朗
    セッションID: 2C-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】パスタは通常、ソースと絡めた状態で食べられるものであるため、総合的な品質はその状態で評価される必要がある。しかし、これまでの研究はパスタ単独もしくはソース単独での評価がほとんどであった。消費者の志向の複雑化・高度化に伴い、パスタメニューのさらなる高品質化を目指すためには、ソースを絡めた状態でのパスタを科学的に評価する必要がある。本研究では、乾燥パスタに様々な種類のソースを絡め、パスタへのソース成分の浸透度合いを評価した。

    【方法】乾燥パスタは太さ1.7mm径のスパゲティを用いた。まずパスタの茹で時間による違いを評価するために、8分30秒と11分で茹でてトマトソースに2分絡めた。次に粘度による違いを評価するために、320mPasと1340mPasのトマトソースに絡めた。最後に、ソースの種類による違いを評価するために、トマトソースと和風ソースに絡めた。パスタをソースから取り出して、XRFで分析し、ソース中の食塩の塩素を指標として、パスタに浸透したソース成分の評価を行った。

    【結果】パスタの茹で時間を変えた場合は、全体的に茹で時間が長い方が塩素シグナルが大きく、ソースの浸透度が高かった。ソースの粘度を変えた場合は、塩素シグナルに大きな違いがなく、粘度による浸透度の差はなかった。和風ソースを絡めたパスタでは、トマトソースよりパスタ表層に塩素シグナルが高く、表層にソースが分布していた。これは、ソースの水分含量や不溶性成分の含量によるものであると考えている。
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