抄録
【目的】寿司は元来、郷土料理として地域に密着し発展してきたと考えられるが、現在では回転寿司などの台頭から、郷土料理としての寿司の位置づけや寿司と郷土料理のイメージは世代や地域の違いによって乖離がみられる可能性がある。そこで、世代や地域の違いが寿司の位置づけや寿司と郷土料理のイメージにどのように関連するかを比較、検討することを目的として調査を行った。対象は、兵庫県出身者である若い世代と中高年世代とし、中高年世代については兵庫県播磨地域の2地区(南西部と北西部)に居住する者とした。
【方法】調査は、無記名式の自記式質問紙法にて平成28年9月~11月に実施した。対象は、若い世代は兵庫県姫路市のA大学学生(10~20歳代)とし、中高年世代は50~70歳代とし、播磨南西部は姫路市とその近郊に居住する者、播磨北西部は宍粟市千種町に居住する者とした。
【結果と考察】世代や地域の違いによって、寿司の位置づけや寿司と郷土料理のイメージは異なる傾向がみられた。若い世代と播磨南西部の中高年世代は、郷土料理は寿司ほど良好なイメージでなく、味のイメージも特になかった。一方で播磨北西部の中高年世代は、郷土料理の食体験割合が高く、郷土料理に対して親しみやすく好きでおいしそうというイメージを持ち、寿司にも同様のイメージを持っていた。これらのイメージ比較から、若い世代と播磨南西部では、寿司と郷土料理とは異なった位置づけで、郷土の寿司の認識は薄らいできていると考えられた。それに対し播磨北西部の中高年世代は、寿司と郷土料理に似た位置づけを感じていた。これらの結果より、世代や地域の違いが寿司と郷土料理のイメージ構成に関連していることが明らかになった。