日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成30年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2A-14
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口頭発表
自閉スペクトラム症児における食嗜好の特徴
*渡邊 順平堀江 菜々子塩見 朋子佐藤 典子玉村 公二彦杉山 薫
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抄録
【目的】自閉スペクトラム症(以下 ASD と略す)児のなかには、食品・調理された食物に対する嗜好に著しい偏りやこだわり(以下食嗜好と略す)があることが知られている。しかし、現在の食生活における具体的な食品・食物への食嗜好の実態は定かではない。そこで、ASD 児の食嗜好の有無、特徴、加齢に伴う変化を明らかにする目的でアンケート調査を行った。

【方法】調査は 2017年 10~11 月に奈良県下の養護学校 3 校の小学部に通学する小学校児童(ASD 以外の障がい児も含む)および対照として生駒市公立小学校児童を対象とし、いずれも同児童の保護者に対する無記名アンケートの形式で実施した。回収率は養護学校、通常学校いずれも 42~44%、そのうち有効回答は、それぞれ 39%(ASD児)、100%(健常児) であった。調査は 78 品目の食品に関する食品別嗜好度、食物別嗜好度について、-2 拒否的~+2 固執的 の 5 段階または摂取経験なしで記入させた。

【結果】ASD 児は健常児に比べ嗜好が全般的に負側にシフトする傾向が強く、特に魚介類、野菜類、果物類で顕著であった。これらの品目のほとんどが健常児では正であるがASD 児では負を示している。例としてマグロ、キュウリ,トウモロコシ,ブドウ,レモンの値が健常児ではそれぞれ 0.93, 0.55, 0.73, 0.95, 0.11 であったのに対し、ASD 児ではそれぞれ -0.83, -0.44, -0.07,-0.12,-0.83であった。食物の嗜好性においても、ASD 児は刺身、サラダに大きな負の嗜好性を示していることからも、生食を忌避する傾向が示された。尚、食品における学年別分析からは、ASD 児の加齢に伴う嗜好変化は窺えなかった。一方、食品の摂取経験は加齢に伴い増加する傾向が見られた。
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