日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成30年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2D-3
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口頭発表
抹茶の点て方に関する化学的考察
*堀江 秀樹江間 かおり野村 幸子物部 真奈美
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抄録
【目的】近年、抹茶の食品素材等への利用が広まり、海外でもmatchaに関する関心が高まりつつある。一方で抹茶は本来飲料なので嗜好性が重要なはずであるが、その呈味成分等に関わる化学的研究は少ない。抹茶は被覆栽培した茶樹の新芽を利用するので苦渋味成分であるカテキンが少ないとされるが、被覆にともない含量が低下するのは苦渋味の弱いエピガロカテキン(EGC)であり、苦渋味の強いエピガロカテキンガレート(EGCG)の含量の低下はほとんど認められない。粉末状にした茶葉を熱水中ではげしく攪拌抽出した抹茶はEGCGによる苦渋味が強いものと予想されるにもかかわらず、抹茶が何故好まれるのか、化学成分の面から考察した。

【方法】抹茶は官能審査に用いられる方法に準じて調製した。調製した茶を遠心分離した上清をキャピラリー電気泳動法あるいは高速液体クロマトグラフィにより成分分析した。

【結果と考察】抹茶では起泡性が重視される。調製時にEGCG等の苦渋味成分が泡に移行するため、抹茶浸出液の苦渋味が低減されるとの仮説のもと、泡立てる前後の茶の成分濃度を比較したところ、成分濃度の差異は認められず、泡の影響は小さいものと考察した。一方で、審査の点て方で調製した抹茶の成分の浸出率は、テアニン、カフェイン、EGCは80%以上であったが、EGCGは50%以下で、浸出液中のEGCGの濃度は煎茶等の官能審査液よりも低かった。抹茶を点てる際茶筅を激しく振るが、このことが湯温の急激な低下を招き、その結果温度依存性の高いEGCGの湯への溶出を妨げるため、点てた抹茶浸出液では茶葉成分中の含量から予想されるほどの苦渋味は観察されないものと考察した。
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