日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成30年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2D-9
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口頭発表
鉄製フライパンからの鉄の溶出の経時的変化及び食材への鉄の移行について
*鷲頭 哲男伊藤 直子
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抄録
【目的】鉄鍋を用いて調理すると、調理中に鉄が溶出し、食材に移行することが知られている。しかしながら、これまでの報告では鉄の溶出量は様々である。その原因として、鉄鍋の使用頻度や経過日数等が考えられた。そこで、新品の鉄製フライパンを用いて、使い込まれる過程の鉄の溶出の変化及び使い込んだと考えられる状態での食材に移行する鉄量を調べた。

【方法】新品の鉄製フライパン(株式会社岩鋳)を用い、条件を揃えるため、毎回、使用前にフライパンに500mlの蒸留水を加えて10分間加熱した後乾燥させ、そこに蒸留水、1%食塩水、1%食酢水を500ml加えて30分間加熱することを6か月間繰り返した。その後、鶏胸肉(1×2×10cm)を同様に茹でた。対照としてアルミ製フライパンを用いた。毎回の加熱により得られた溶液及び胸鶏肉の鉄量を測定した。鉄量は灰化後、塩酸抽出し、原子吸光光度計(UV-2400PC,Shizmadzu)を用い、吸光度248.3nmにて求めた。

【結果】鉄製フライパンからの鉄溶出量は、新品から6か月後(30回使用後)までは食酢水、食塩水、蒸留水の順で多かったが、時間経過とともに、食酢水での鉄の溶出量は減少していった。食塩水での鉄の溶出量も減少したが、食酢水での鉄の溶出に比べて減少は緩やかであり、6か月以降は、食酢水と食塩水の鉄の溶出量はほとんど差がなくなった。鉄の溶出量が比較的安定したところで、鶏胸肉を茹で、肉の鉄量を調べたところ、食塩水で茹でた肉で最も鉄量が多かった。アルミ製フライパンで茹でた鶏胸肉の鉄量と比較すると、水では有意差が見られなかったが、食塩水、食酢水では鉄鍋で茹でた肉のほうが有意に鉄量は多かった。
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