【目的】炒め調理は家庭で行われる頻度の高い調理法であるが,水っぽくなる,やわらかくなりすぎるなど,おいしく仕上がらないという声も多い。家庭で簡便においしい炒め物を作る方法を探るため,まず本研究では,炒め物の官能評価に適した評価項目を検討し,おいしさに関係の深い要素を明らかにすることを目的とした。
【方法】北海道産たまねぎを高さ5cmになるよう上下を切り落とし,放射状に幅5〜10mmに切って試料とした。口径26cmのフッ素樹脂加工フライパンに試料重量の5%のキャノーラ油を入れ,中火で火力を固定したガスコンロを用い,フライパン表面の温度が200℃に達した時点で試料を投入し,ヘラで撹拌しながら炒めた。炒め時間(1,1.5,2,2.5,3分),試料重量(50,100,150,200g)を変えて実験を行い,炒め後の試料重量から重量残存率を算出した。また,炒め試料について官能評価を行った。
【結果および考察】試料100gを用い炒め時間を変えた場合,重量残存率は炒め時間1分で95.9%,2分で87.6%,3分で77.3%であった。炒め時間を2分とし試料重量を変えた場合,重量残存率は50gで83.2%であったが,200gでは93.2%となった。官能評価では,50g-2分,100g-2分,2.5分,3分がおいしいと評価され,その重量残存率は75〜90%であった。重量残存率90%以上では生に近い状態であった。官能評価の項目では,「火の通り具合」「香ばしさ」とおいしさとの間で正の相関が,「辛味」で負の相関が高く,たまねぎの場合,これらがおいしさと関係の深い要素であることが明らかになった。その他の官能評価項目とおいしさとの間にも相関が見られた。