【目的】昨今,ホルスタイン種,ジャージー種などの乳牛と黒毛和種など肉牛を掛け合わせた交雑種の流通が盛んになりつつある。これらの食味性は遺伝子により異なるが,詳細はまだ明らかではない。そこで,遺伝子と食味性との関係を検討し,それらの特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】パネルは五味識別,うま味濃度差訓練を行った訓練パネル20代若年女性24名とし,評価項目は外観,牛肉の好ましい香り,味(フレーバー)(うまみの強さ),食感(テクスチャー),多汁性(肉汁の量),脂っこさ,総合評価の7項目とした。
試料は国産牛交雑種サーロイン部を用いて,試料調製方法を統一し,厚さ1 cm,縦3 cm,横4 cmに切りそろえたものを200 ℃のホットプレートを用いて中心温度計60 ℃になるまで加熱を行った。7段階評価尺度による官能評価を行い検討した。これらの測定値は二元配置分散分析により検討を行い,さらに多型解析を行った。
【結果および考察】解析した結果,「総合評価」の4点台をふつう,それ以上を好まれた,それ以下を好まれなかったとしたとき,好まれたものについては「味」,「食感」は5点台,「多汁性」と「脂っこさ」は4点台が多い傾向がみられた。また評価項目と官能評価の評点については「総合評価」に対して「多汁性」に有意差が認められた(p<0.05)。また,「多汁性」に対して「香り」,「味」,「食感」に有意な差が見られた(p<0.05)。これらの結果から,程よい多汁性の牛肉が好まれることがわかった。よって,粗脂肪含量が咀嚼時に流出する肉汁の多さに関わり,牛肉の食味性に影響を与えることが示唆された。