主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2019年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 中村学園大学
開催日: 2019/08/26 - 2019/08/27
【目的】天ぷらは一般に人気の日本料理であるが,大量調理においては,作業工程の複雑さや,栄養管理面,さらには時間経過により衣の状態が変化し,品質が低下するという問題が知られている。この劣化現象は温蔵による適温保存の際にも発生するため,出来たての提供が難しい大量調理では敬遠されることが多い。本研究では,適温保存により劣化した天ぷらをより質の高い状態で提供するための調理方法を考案し,給食で提供される料理の質の向上を目指す。
【方法】えび・さつまいも・なすを検討試料とし,衣には市販の天ぷら粉を用いた。170℃に設定したフライヤーで調理後,2時間温蔵保管した各試料をコントロールとした。調査対象として,同様の温蔵保管後にスチームコンベクションオーブンを用いて(1)コンビ180℃湿度100%5分,(2)コンビ180℃湿度100%2分,(3)コンビ150℃湿度100%5分の加熱処理をそれぞれ実施し,官能検査による比較を行った。対象者は当校教員7名とし,6項目において採点法による評価を行い,合わせて固さ・テクスチャー・品質についての質問も実施した。
【結果および考察】えびでは(1)が全体を通して高評価が多く,質問より全員が天ぷらとしての品質を保っていると返答した。風味においては,全方法で評価が高く,加熱処理によってより香ばしく感じられたと考えられる。さつまいもではえび同様(1)が高評価で,食感・風味・ぱさつきが改善され柔らかく感じたとの評価が多かった。なすでは高評価は(1)の食感のみで,(2)(3)では低評価も多数見られた。全試料において加熱処理により余分な油が一部排出していたが,なすは構造上油を吸着しやすく,(2)(3)では加熱不十分で油っぽさが改善されなかったことが示唆された。