【目的】清酒の国内消費量は低迷し,若年層の酒離れが進んでいる。一方で,2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことをきっかけに,世界で日本の食文化が注目され,清酒の輸出量は年々増加している。清酒と料理のペアリングを提示することで,若者や海外の人にも清酒が親しみやすくなると考えられる。本研究では,淡麗辛口と称される新潟清酒を活かすことができる郷土料理のペアリングを検討することを目的として,味覚センサによる呈味評価と官能評価による嗜好性評価を行った。
【方法】新潟産の清酒8種,比較対象として,新潟産赤ワインおよび白ワインを使用した。新潟の郷土料理には,くろさき茶豆,鮭の酒びたし,のっぺの3品を用いた。酒の評価と郷土料理とのペアリングについて,味認識装置TS-5000Z(インテリジェントセンサーテクノロジー社製)により測定するとともに,大学生をパネルとして官能評価を行った。
【結果および考察】味覚センサ評価において,個々の酒の呈味に違いがみられ,旨味コクや苦味雑味,塩味に特徴のある清酒もあった。味に特徴のない清酒を学生は飲みやすく感じていた。酒のみの評価において,独特な香りや渋味による刺激等で好みの順位が比較的低かった2清酒は,どの郷土料理とのペアリングにおいても高い評価になった。これらの料理と合わせることによって相性がよいと評価された清酒は,味覚センサ評価において組み合わせ時に旨味コクの値が増加する傾向にあった。ワインの嗜好性は高かったが,郷土料理との相性では全て低い評価であった。このように,酒と料理のペアリングによって味の感じ方が変わるため,郷土料理の特徴に合わせた清酒選びが重要であると考えられる。