【目的】2016年に発効したパリ協定で,日本は2030年度に26%(2013年度比)の温室効果ガス削減を表明しており,家庭部門においても大幅な削減が求められている。これまでに我々は,食生活におけるCO2削減に関し,調理行動がどのような影響を与えるのかを継続して調査してきた。本研究では,昨今の調理機器の改良に合わせ,現在販売されている調理機器を用いて,調理の基本操作における省エネ行動の効果を評価することとした。今回はオーブン及びグリル使用時の同時調理の省エネ効果と,湯を沸かすと飯を炊く行動に関し,保温せずに必要な時に必要な量の加熱操作を行うことによる省エネ効果について報告する。
【方法】行動項目として,(1)オーブンで同時調理する(オーブン皿を2段で1回加熱と1段で2回加熱との比較),(2)グリルで野菜や肉を同時調理する(同時調理と別々調理との比較),(3)必要な時に必要量の湯を沸かす(その都度沸かすのと一度に沸かし保温した場合との比較),(4)飯はその都度炊く(その都度炊きと一度炊きし保温した場合との比較)を設定した。それぞれ実際に販売されている調理器具等を用いて省エネ行動と通常行動とを3回ずつ比較実験を行った。
【結果および考察】各行動項目の平均CO2削減率及び年間CO2削減量はそれぞれ(1)71.8%,12.5kg,(2)44.6%,9.1kg,(3)84.6%,83.0kg,(4)74.2%,89.1kgとなった。これらの結果,食事作りは習慣性が高いこと,一つひとつの行動効果は小さいものの通常行動と比較した際の省エネ行動の1回あたりの削減効果が大きいことから,毎回省エネを心がけることで継続した省エネ効果が期待できる可能性が示唆された。