主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2019年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 中村学園大学
開催日: 2019/08/26 - 2019/08/27
【目的】西洋料理においてワインビネガーは欠かせない食品だが,日本人の生活に定着したとは言い難い。本研究では,日本におけるワインビネガーの利用の歴史を探るとともに,ワインビネガーが日本にどの年代から受容され,生活に至るまで定着しなかった原因を探るのを目的とした。
【方法】明治,大正,昭和の料理書などを対象として文献調査を行った。
【結果および考察】文献調査では江戸時代以前はワインビネガーの利用は認められなかった。明治初期では専門書において西洋や舶来の酢を調味料として活用されており米酢などの日本酢以外の酢を活用していた。一方で,明治5年に書かれた海軍省公文備考では大砲の色付け用に西洋酢が使用された記録があり,食品以外の活用も認められる。明治中期から後期ではワインビネガーの活用は増加したものの専門書や女学校の教本が主であり家庭料理での活用は一部に留まっている。大正時代においても依然として専門書での活用が主であったが,葡萄酢や佛蘭西製葡萄酢と明確にワインビネガーが指定される傾向が見られた。昭和初期では家庭料理本においても西洋酢が活用され,西洋酢の通販広告が掲載される例も見られた。戦後では,サラダが食文化として定着しワインビネガーの主な活用法であるマヨネーズやドレッシングの市販品が各家庭に普及し,家庭料理本でワインビネガーの活用が減少していた。ワインビネガーを活用している料理書においても西洋料理にはワインビネガーが最適と述べつつも,市販のマヨネーズで主に使用されるりんご酢やなじみの深い米酢等の使用を認めている。このように身近な食品で代替が可能と記されたことにより使用頻度が激減し日本の食生活に定着しなかったと考える。