日本調理科学会大会研究発表要旨集
2019年度大会(一社)日本調理科学
セッションID: 2B-1
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口頭発表
千葉県 匝瑳市指定文化財「大浦ごぼう」の物性に与えるゆで汁の影響
*古本 美栄中島 肇
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抄録

【目的】千葉県匝瑳市の指定文化財である大浦ごぼうは,成田山新勝寺に全国から訪れる参拝者へ精進料理の一品として調理されている。この大浦ごぼうの特徴は直径10cm程と太く,内側が空洞になっており,長さは60cm〜1m程ある。一度,植えると5年は同じ場所では栽培できず多量の養分が必要であるといわれる。一般的なごぼうに比べ,厚い皮ごと食すため下処理が必要である。大浦ごぼう下茹でに適した調理法を物性面から評価した。また,ごぼうの機能成分の一つであるクロロゲン酸についても予備検討を行った。 

【方法】200ml容ビーカーに,5種類の溶液(蒸留水,1%食塩溶液,5%食酢溶液,0.3%重曹溶液,1%糠溶液)を100mlずついれ沸騰湯浴中で加熱を行う。ごぼうは,たわしでよく洗い泥をおとし,厚さをそろえ3枚30g入れた。経時的に1枚ずつとりだし,TA XT Plus(TA社)を用い,5mmのステンレス製プランジャーを用い,80%圧縮率で測定した。また,それぞれの茹でた溶液を採取し,高速液体クロマトグラフィーにてクロロゲン酸を測定した。

【結果および考察】0.3%重曹では破断応力が低下したが,ごぼうの一部が緑色に変色した。緑色への変色は外皮部分からよりも,内腔部分から起こっていた。今回,ごぼうを2時間まで茹でたが,重曹以外は水と破断応力には差が無く,ゆで汁に灰汁がでてくる様子はみられなかった。また,HPLC測定の結果,この緑変はクロロゲン酸の変色であることを確認した。成田山新勝寺で調理担当者にヒアリングを行ったところ,現在では水茹でを行っているとのことであった。水茹で法は大浦ごぼうの軟化に有用であることが示唆された。

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