日本調理科学会大会研究発表要旨集
2019年度大会(一社)日本調理科学
セッションID: 2C-5
会議情報

口頭発表
フライ食品喫食時における香ばしさと香気成分の関係について
*岡本 裕樹木村 功柿本 健一多田 早希井上 賀美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】高温で加熱調理するフライ食品は好ましい香ばしさを特徴とし,調理後,徐々に失われていく。したがって,香ばしさに寄与する成分を推定,コントロールすることはおいしさを維持する上で重要と考えられる。しかし,油脂およびフライ食品由来の香気成分分析値と,喫食前および喫食中の香ばしさに関する官能評価値とを統合解析した例は少ない。そこで,本検討では油脂中およびフライ食品の香気成分を分析,解析を行うことで喫食前後の香ばしさに寄与する香気成分の違いを検証し,油脂の香ばしさに与える影響を検証した。

【方法】劣化度の異なる複数の油でとんかつを揚げ,専門パネルによる官能評価を記述分析(VAS法)にて実施した。評価項目は喫食前に感じる香ばしさと喫食中に感じる香ばしさとした。とんかつ,および油脂中の香気成分分析は捕集剤を用いた加熱脱着法およびDHS法によるGC-MS分析を行った。抽出した香気成分と官能評価値を用いて多変量解析を実施し,香ばしさに寄与する成分の推定を行った。

【結果および考察】官能評価の結果,喫食前と喫食中の香ばしさとの間に正の相関を示したが,一部サンプルの乖離がみられた。そのため,両者の間には異なる要因があると推定し,香気成分を対象に多変量解析を実施した。OPLS回帰分析を行い,関連性の高さを示すVIP値を確認したところ,喫食前の香ばしさは上位にはとんかつ由来成分が多く抽出された。一方,喫食中の香ばしさは油脂に関係する成分が多く抽出された。以上より,喫食前の香ばしさには調理過程で生成する成分が,喫食中の香ばしさには油脂の臭いが影響することが示唆された。フライ食品の好ましい香ばしさには,油脂由来の臭いの制御が重要と考えている。

著者関連情報
© 2019 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top