主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2019年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 中村学園大学
開催日: 2019/08/26 - 2019/08/27
【目的】多量の試料が必要な従来の油脂の劣化分析手法では,試料の確保が困難な市販の揚げ物の酸化劣化の定量化は不可能である。少量でも測定可能な赤外分光光度計 (IR)でも,劣化指標となるカルボニル基(1970cm-1)はサラダ油自体がエステル基を有しているため評価は難しい。植物油は,酸化が始まるとヒドロペルオキシド基を生成蓄積しながら劣化が進行し,昇温時,蓄積量に応じて急激に酸化反応が生じて劣化レベルに合わせ酸化反応は低温側にシフトする。この酸化開始温度(IOT)を用いて,本法では揚げ油の劣化分析手法の開発を試みた。
【方法】油の処理時間の短縮を考慮し,過酸化物(DCP)を添加した市販のサラダ油をオイルバスに入れ,190℃まで昇温し同温度を保持しながら任意の処理時間ごとに採取した試料のIOTを示差走査熱量計(DSC)で測定した。従来法の動粘度法(JIS K2283)と全酸価法(JIS K2501)による分析も併せて実施しIOT測定値に対する検証を行なった。DCPを添加しないサラダ油についても同様の分析を行なった。
【結果および考察】12時間熱処理したDCP添加サラダ油,36時間熱処理したサラダ油いずれにおいても,時間の経過と共にIOTは低下し,動粘度法,全酸価法についてもIOTと同様の劣化挙動を検出することを確認した。本手法は,1mg以下という少量の油でも分析可能であるため,揚げ物食品の劣化評価に極めて有効と考えられる。今後,官能評価も含めて,本研究を鋭意進めていく予定である。