【目的】調理師養成課程においては、調理技術を磨くことや嗜好性・外観を重視しており、栄養学的な教育は行われているものの、コース料理に栄養価を合わせるのは難しい傾向がある。しかし、生活習慣病が増え続けている昨今、最低限その前後の食事での栄養バランスを考慮する必要性がある。これまで栄養士・管理栄養士養成課程と調理師養成課程の大学で教鞭を取り、両学生が献立作成実習を行う過程において、栄養に対する姿勢の違いを大いに感じてきた。そこで、調理師養成課程の献立作成実習の中で、コース料理作成の際にも、嗜好レベルを保ちながらも栄養分野を強化する取り組みを行い、栄養バランスや調整法を取り込む教育方法を検討した。
【方法】栄養士養成課程では、献立作成時に栄養価を調整し試作を行う。しかし、調理師養成課程では、献立作成時はコース料理の各レシピの特性上、美味しさや見た目の美しさを保ちつつ、調整する方法を取っていた。そこで、試作後の調整過程に、栄養価計算から食事摂取基準との比較、PFC比、調味%の計算を取り入れ、野菜・緑黄色野菜の摂取量を含む栄養価の考察を行った。また、コース料理摂取時の1日のバランスについて検討した。
【結果】コース料理はハレの日の食事のため、西洋・中国料理では脂質、タンパク質が高く、日本料理ではタンパク質、塩分が多くなる傾向にあった。また、PFC比や食事摂取基準比較においては西洋・中国料理は特に炭水化物が少なく、デザートを除くとさらに少なくなった。調整過程で量の変更以外に、野菜使用量や脂質、タンパク質、塩分の調整を行うことで、ハレの日の美味食の中にも健康を考慮した献立を考案できるようになり、学生への調査を行ったところ、献立作成における栄養に対する意識の向上が伺える結果を得ることができた。