主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2021年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 実践女子大学 日野キャンパス
開催日: 2021/09/07 - 2021/09/08
【目的】 日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の調査方法に従い実施した、昭和30〜40年頃までに北海道に定着した家庭・郷土料理に関する聞き書き調査を基に「行事食」について検討した。
【方法】 調査は、北海道を道央・道南・道北・道東の4地域に区分し、平成25年4月〜26年12月に実施した。今回は、「行事食」のデータから大晦日・正月、北海道神宮例祭(札幌祭り)を中心に、ひな祭り・端午の節句・冬至について食材や地域性を取り上げた。
【結果】 北海道では正月料理を、大晦日に年取り膳として食べる家庭が多いことに特徴がみられる。本調査でも道央を除く沿岸部では「くじら汁」、道南・松前町では山海の材料を入れた「つぼ」が暮れから大鍋で煮込まれ、年越し・正月料理として食されていた。全道的には身欠き鰊の「昆布巻き」、鮭の「氷頭なます」・「いくら」、地域の魚・野菜を利用した「飯ずし」、小豆やインゲン豆などから「羊羹」・「豆きんとん」が作られ年取り膳から食されていた。雑煮は、一般的には醤油味に角餅が多いが、味噌仕立てや餡入り丸餅などもみられ北海道入植者が故郷の味を受け継いでいる様子が窺える。ひな祭りでは「ちらしずし」、酒粕または米麹で作った「甘酒」、端午の節句では「のり巻き」・木の葉形の「ベこもち」・「餡入り草餅」が食されていた。札幌祭りでは初夏が旬の「時鮭(時しらず)料理」、甘納豆や小豆の「赤飯」、山菜を利用した「お煮しめ」などが札幌市民に受け継がれていた。冬至には、貯蔵していた南瓜で「南瓜しるこ」が食されていた。北海道の行事食は旬の食材を活かすとともに、山菜類・豆類・魚介類など各地域の産物を貯蔵・加工して活用していることが認められた。